第12話

「家を出る時にいたんだよねぇ。玄関のドアを開けたら立ってるの。近所のおばちゃんに彼氏さんなのねぇって言われちゃったよ」



いや、それってもうストーカーだと思う。


真理亜は分かっているのか?


あなたの家に約束もしていないのにいる状況をよく考えてほしい。



「なんでそんな状況に?」



「あーっ、大学から出るとたまーにいるんだよ。この間もいてさ。今度、凛ちゃんとケーキバイキング行くんだって言ったら時間と場所を何度も聞いてきて。もう煩くて。それしか喋らないから耳を塞ぎたくなるほどに」



「黙らせるために喋ったのか。だから、今日いたのか」



「うん。まぁ、凛ちゃんに対して害するわけじゃないから別にいいかなって。喋らないとずーーーーーと聞いてくるからさぁ。美味しいドーナツも美味しく感じないくらいに、ね」



確実に隣を侵食してる。


怖いくらいに。


真理亜の性格をよく知っているというか。


強引に攻めればいいというわけではないし。


これは、近いうちに………………


いや、そんな簡単に落ちないか。



「凛ちゃん。おかわりしてくる!凛ちゃんは何か食べたいのある?一緒に持ってくるけど。あっ!飲み物がいい?コーンスープあったよ」



「ケーキはもういいかな。スープをお願い。1人で大丈夫?」



「大丈夫!トレーという味方があるからね」



きっと真理亜の心はウキウキ状態だろう。


次は何を食べようかと考えているところだろう。


私は何個もケーキを食べているから口の中が甘くて辛い物を食べたい気分だ。


無性に辛いラーメンが食べたい。


少しすると真理亜が戻ってきた。


皿の上には大量のケーキ。


そして、私のコーンスープ。



「このチョコケーキ最高だよぉ。幸せ」



「それは良かったね。本当に凄い胃袋だよ」



「あーっ、大学のみんなには引かれたけどね。お昼の時間に。だけど、我慢はよろしくないからね」



それは、びっくりしたでしょうね。


その後、真理亜の底なし胃袋はいつも以上の力を発揮した。


お店の人もきっと驚いてることだろう。


周りの視線を感じたからきっと驚いてるはずだ。


お店から出て駅に向かって歩いていると前から見たことがある男が歩いてきた。


いや、さっき見た。


さっき、彼の話をしていたからね。



「迎えに来ちゃった!」



………………。


そんな可愛く言われても。


自分の年齢を考えろ。


それは、もう無理だろう。



「何が迎えに来ちゃった、よ。迎えに来たというよりずっと待ち伏せしてましたって言いなさい。真理亜に何度も聞いて。そんなに暇なのね。お前はストーカーか?学園の頃より酷くなってると感じるけど」



「うわぁ、相変わらずだね。そのズカズカ言う感じ。なんだろう。懐かしさを感じるかも。最近、平和すぎるからかな?って!ストーカーじゃないから!調べてないし。ちゃんと真理亜本人から聞いてるから!」



雪は怒ってる口調で言っているが全く怖くない。



「凛ちゃん。早く行こうよ。この後、洋服見るんだから!」



真理亜、雪のこと無視してるでしょう?


でもね?


無視をしても意味ないと思うの。



「変わらないのね。あなた達のやり取り。まぁ、いきなり変わったらびっくりしちゃうけど」



「セールやってるんだって!これはお買い得!」



セールが嬉しいおばさんみたいだな。


雪は真理亜の隣を歩くのかと思ったが、なぜか私の隣を歩いている。



「ねぇ?いち君のこと何か聞いてる?」



柚月?


………………。



「何も。なんで?」



「何もないならいいや!」



いや、何かありそうだから聞いたよね?


あなたって、何かある時に聞くでしょ?



「あなた、柚月と連絡取り合ってるんでしょ?」



「たまーに。いち君は忙しいからねぇ。でも、なんか最近凄く忙しいみたいだから。連絡してもすぐに終わっちゃう。少しだけ話して切られちゃうの

今度、ご飯食べようって言っても断っちゃうし」



「私は何も知らない」



連絡なんてしようとも思わないし。


今のところは必要性を感じないし。


私の裏の部分は上がったりも下がったりもしていない。


多分………………



「早く!!!終わっちゃうよ!」



張り切っているのか真理亜はズンズン歩いていた。


機嫌を悪くさせるのも悪いか。


私も歩くスピードを上げる。


雪もそれに続いて歩いた。

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