イメチェンしても性格は変わらない
第11話
「また、そんなにケーキ食べて」
「凛ちゃん。ケーキバイキングに来てるのに何を食べるというのさ?」
「量のことを言ってるの」
日曜日、真理亜がケーキバイキングの割引券を持っているからと一緒に来たのはいいが、今までで一番の量を食べている。
何かストレスでも溜まっているのか。
「真理亜?大学はどうなの?」
「う〜ん。まぁ、大変だよ。広くて。迷子になっちゃうくらい。教室移動が怖い」
いや、そういうことを聞いてるわけではなかったけど。
まぁ、真理亜らしいか。
「覚えるしかないね」
「凛ちゃんはどうなの?」
「そうねぇ、アホな会話を聞かされて笑わないように気をつけてる」
「ん?アホ?」
「あと、サークルに入ったの」
「おぉ、いいじゃん!サークル!いいことだよ!で?なぜ、アホ?」
「前に日向のことを話したじゃない。ソイツの周りにいるアホな女の会話が凄く面白いから。アホの中のアホだね。どこでもあんなアホはいるんだね」
「あーっ、なんとなく分かった。それは嫌だねぇ。そういうのって目立つし。うるさいからね」
「サークルに入るかもしれないし」
「誰が?」
「日向が」
「………………それは絶対に阻止したいね」
「問題を解決してくれるなら入ってもいいと思う。でも、何もしないで入ろうとするのは嫌だ。片付けてからにしてほしい。今は保留扱いなの」
「今まで放置してたんだよね?なら、自分で動こうとは思わないんじゃないかな?短大に入る前からそうやって過ごしてきたような感じだし」
「水でもぶっ掛けたら頭の回転がよくなるかしら?」
「やめて!ブラックになってるから!それに、そんなことしたら問題になるからね!!」
大丈夫だ。
そんなことしないから。
そこまでイライラしているわけでもないし。
私に迷惑をかけているわけでもないし。
「冗談だよ。そんなことしないから」
「良かった。あの学園がヤバイところだったから。感覚おかしくなるよね。私も大学に入ってから凄く平和だなぁって。平和ってなんだっけ?ってなるところにいたからね。ニコニコ笑ってるのに心の中でも全く笑ってない人だらけだったし。いや、普通の人もそういう人いるけどさ。なんていうか、もっとブラックな感じでさ」
真理亜はほのぼのな表情をしている。
そんな顔でケーキをパクパク食べている。
なんだろう。
言ってる内容と表情があってない。
やっぱり、強くなっている。
「真理亜はサークルに入らないの?」
「私はいいかなぁ。興味がねぇ。ないからねぇ。帰りも遅くなるし。帰りのドーナツ屋さん閉まっちゃうし。人気なんだよ!プレーンが有名なんだ!外はサクサクで、中はふわふわ!たまりません!!値段もお手頃価格だし!小さいけどカフェもあるの。そこのコーヒーも美味しいよ!頭をたくさん使った後の甘いものは格別だよね。脳みその中の隅々まで浸透する感じがするの。あぁ、私の脳みそは甘いものがないと生きていけないって!休み時間にチョコ食べたりしてるけど、それだけじゃ全然ダメでさ。やっぱ、最後の最後の特大の甘いものだよね」
いや、帰りのドーナツ屋さんはあまり関係ないと思う。
というか、毎日行ってるの?
買い食いは程々にしないと、本当に糖尿病になるよ。
本当に危ない病気なんだから。
悪化したら壊死とかしちゃう病気なんだから。
………………。
あれ?
真理亜って医学部だったよね?
医者を目指している子がこんなことでいいのだろうか?
誰か止めてくれないだろうか。
まぁ、そんなことより。
もっと聞きたいことがある。
「ねぇ?真理亜」
「ん?」
「さっきから気になってること聞いてもいい?」
「何?」
本当にさっきから気になっていた。
でも、聞いてもいいのか迷っていた。
「待ち合わせ場所にさ、真理亜だけじゃなかったよね?アレは、いつからいたのかな?って」
駅の時計台で待ち合わせをしていたのだが、そこにいたのは真理亜だけではなく駄犬と呼ばれていた雪も一緒にいた。
なんだか、当たり前のように隣にいて当たり前のように「いってらっしゃい」と言っていた。
大学に入ってから学園の頃より接近してる。
それは確かなことだ。
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