第8話

表と裏の使い方が下手になってきたのかな。


それとも、【アレ】が関係しているのか。



「ごめんなさい。少し言い過ぎた」



「いや…………………俺が言ってもあまり効果ないと思うよ。俺より、椎名さんのほうが効果的だと思うけど」



私が言ったら言ったで揉めるはずだ。


イジメの対象にされたくないし。


まぁ、その対象にされたら多分こっちも黙ってないと思うけど。


相手は表だから手加減はしてあげるけど、それなりの罰はさせてもらう。



「私が言ったらもっと険悪になるでしょう。この場合は原因になっている貴方が解決するべきだと思う」



「は〜ぁ」



なぜ、溜息?


そんな嫌なの?


いや、この状況をどうかするという行動は私でも嫌だけど。


これは、あなたが悪いことだから。


もう、このサークルに入らないって選択したほうがいいのでは?


それが一番いいことだと思うけど。


本人はその選択はしないだろうな。



「日向君!やっぱり、このサークルに入るんだね?私も入ろうと思っていたんだ!ここのサークル凄いんだよ。いろんなコンテストで出られるし。実践は大切だよね。良かったらチームで出ようよ。ね?最初から個人は不安なんだよね」



あれ?


言い合いをしている女とは別な女がやって来た。


………………。


う〜ん。


これは増えるな。



「コンテストの応募費用が学校で支払ってくれるんだって!凄いよね!スイーツコンテストにたくさん応募しちゃうかなぁ。それで、賞とか取れれば就職に有利になるし」



本当にコンテストに応募しようとしているの?


いや、応募しても絶対に自分で考えてやらないだろうな。


あーだこーだ言いながら日向に頼って応募しようとするかもしれない。



「おっ!日向じゃん!お前もこのサークルに入るのか?」



今度は男が来た。


次から次へと。


なんだ?


男も同じか?


この輩全員がサークルに入ることは難しいだろう。


先輩たちが許さないと思うし。



「ねぇ?君達さぁ、サークルに興味ないなら出て行ってくれないかな?俺、君達と仲良くなるためにサークルに入るわけじゃないから」



「そ、そんなことないよ!興味あるよ!!将来のために考えてるから」



「はぁ!?いや、俺はこの女と違うから!俺はここの先輩に誘われたからだ!こんな女と一緒にするなよ!」



………………。


日向は私に「ねっ?言ったでしょ?」と言いたそうな顔をした。


男の反応やら目を見ると本気でここのサークルに入りたいから来たようだけど。


女は違うだろうな。



「つーか、日向じゃなくて先輩だ!どこにいるんだ?時間通りに来たのに」



男はグチグチと文句を言いながら教室の奥へと行った。


私も彼と同じように行動しよう。


日向はうるさい女から離れたいのかどこかに行ってしまった。


その後を追うように女もついて行く。


そして、残ったのは私は先輩。



「あの、先輩。こんな状況で申し訳ございませんが改めて言います。このサークルに入ってもいいでしょうか?」



「いいよ。歓迎するよ。椎名さんに対しては特に問題ないし。あっちの問題は後で考えるから。本当に入りたいって人を優先することにするから」



うん、軽いな。



「今更だけど、俺の名前は橋本良樹。調理科2年。よろしく」



「はい。よろしくお願いします」



「今日は軽く挨拶程度にしておこうか」



まぁ、来たばかりだし。


最初にやることなんて少ないだろう。



「椎名さんはどんなコンテストに出たい?製菓学科だよね?やっぱり、スイーツコンテスト?今だと和菓子コンテストかなぁ。そんなに本格的じゃないから最初のコンテストにはちょうどいいかな。何人か応募する予定だから、その人達に聞いてみるのもいいかも。個人コンテストを最初にやるか、チームのコンテストを最初にやるか。オススメはチームかな。先輩からいいアイデアもらえるし。自分の考えと他の人の考えは違うからね。びっくりするよ。そんな考えもあるのかって」



よく喋る。


どっかの誰かと一緒だ。



「あの、必要なものは?」



「ノートとかペンとか。まずは、応募用紙を見てどんなのがあるのか見てもらうよ」



「分かりました」



「まぁ、今日は無理だけど。明日かな。ちょっと隔離しないとダメかも。大きな騒ぎになるなら日向君のこと拒否するかもしれないけど」



隔離………………


拒否………………


拒否のほうがいいと思うけどね。


今日はもう帰るか。


許可をもらえたし。



「今日は、失礼させていただきます」



「そう?うん。分かった。また、明日」



明日、落ち着いていたらいいけど。


無理だろうなぁ。

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