第5話
放課後、早速サークルを見て回ることにした。
大塚さんの言った通りになかなかユニークなサークルがある。
将来のことを考えると意味があるのかなんとも言えないが楽しさはちゃんと感じる。
どうせなら料理関係のサークルに入ってみたい。
いろいろ探して見ると、インドカレーサークルやら1人暮らし夕飯サークルやらフランスパンサークルやら管理栄養士になりたいサークルやら。
いろいろある。
1人暮らし夕飯サークルって何?って思ったけど。
1人暮らしの集まりかと思ったけど、家族と同居してる人もいるらしいから特別なルールはないらしい。
「あれ?まだいる。バスの時間はいいの?」
後ろから声を掛けられて振り返ると日向がいた。
いつも周りは賑やかなのに、今は誰もいない。
1人でこんなところ歩いているなんて。
珍しいな。
逃げて来たのか?
「バスは大丈夫。あなたは、なぜこんなところに?1人でいるの珍しい」
「あのね、いつも誰かに囲まれてるってわけじゃないから。俺は、サークル探してるの」
「そう」
「椎名さんも探してる?」
「まぁ、そうね。探してる」
「へ〜ぇ。椎名さんに合うサークルなんてあるのかな。孤立しない?」
喧嘩売ってる?
まぁ、確かにコミュニケーション能力が低いのは分かってる。
だけど、前よりはかなりマシになったと思う。
………………。
ここにいるみんなは前の私など知らないから、そんなこと思ってもしょうがないけど。
あぁ、複雑な気分だ。
「どんなの見て回ったの?」
「色々。面白いのから真面目なものまで。この先にあるサークルはまだ見てないけど」
「ふ〜ん。この先ってコンテストサークルだね。俺もそこに行こうと思ってたんだ」
そうですか。
この廊下を通るならそうだろう。
この先にはそのサークルだけだし。
行き止まりだし。
「そう。私はこれで」
「俺、コンテストサークルは今のところ一番なんだよね。料理のコンテストに応募するサークルなんだ。チームで出たり、個人で出たり。一緒に見に行かない?」
………………。
これは、誘われた?
………………。
………………。
最後に残していたからいけなかったのか?
なぜ、コンテストサークルを最後にしてしまったのか。
一番、タメになるって考えたから駄目だったのかな?
今更、そんなこと考えてもしょうがないけど。
「………………行く」
行くことはやめないし。
お父さんには早く言いたいし。
「なら、一緒に行こう」
コンテストサークルは使われていない教室を借りているらしい。
有効活用ということだな。
教室を覗くと結構な人数がいた。
他のサークルと比べると圧倒的に人数が多い。
雰囲気からでも人気なんだと分かる。
「あれ?君たちって………………サークルに興味あり?」
近くにいた先輩らしい男が声を掛けてきた。
「はい。少し見てもいいですか?」
「いいよ。説明してあげるよ」
日向が答えてくれたから私はただ隣にいるだけだ。
凄く楽だなぁ………………
いや、本当は自分から話しかけないと駄目だってこと分かってるけど。
「ここのサークルは料理関連のコンテストに応募するサークル。授業でもコンテストに応募するけど、それだけじゃ物足りない奴がこのサークルに入る。コンテストっていろいろ種類があってチームで出るタイプもある。それで、このサークルの中でチームを作って応募する。もちろん、個別に応募も出来るよ。ただ、ネックなのが費用なんだよね。学校からも支援されてるけど、そんなに多額じゃないからさ。地方のコンテストにも出るから旅費も掛かるし。でも、いいところもあるよ。実践が積めるしアイデア貰えるし。授業に活かせるよ」
確かにそうかもしれない。
コンテストに出場すれば、他の人の作品も見れて刺激されるだろうし。
ただ、費用の心配がある。
どのくらい掛かるだろう。
地方のコンテストに出るとしたら交通費だ。
遠い場所だったら宿泊費も。
「人数結構いるからさ。学校の支援だけじゃ無理なんだよね。コンテストに応募する費用は支援金でやってるけど、練習用の材料費は全部出ないから」
「調理場ってどうなるんですか?」
「あぁ、ここの教室って調理場付きだから。テーブルの板を外すとコンロとシンクが出てくる。だから、ここで調理する。下にはオーブンもあるし。奥の部屋にはミニキッチンがいくつか設置されてるから、個別応募の子はそっちで調理するよ。まぁ、自分の家で調理する子もいるけど」
「へ〜ぇ」
「家にオーブンがない子はこっちで作らないとといけないし。道具も全部揃っているし。家電や道具関係は気にしなくていいよ。そのうち、自分専用の道具支給されるだろうから」
今は、始まったばかりだから道具も少ない。
もう少し授業が進めば色々な道具が支給されるらしいけど………………
家にもあるんだよなぁ。
同じようなものが。
道具だらけになりそう。
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