第3話
「椎名さん。今日のお昼はどこで食べるの?学食?それとも中庭?今日は天気いいから中庭もいいよ。そんなに寒くないし」
確かに今日は天気がいい。
中庭でお弁当を食べたら心も穏やかになりそうだ。
だが、今日はお弁当がない。
「今日はお弁当じゃないから学食かな」
「忘れたの?」
「うん。車に乗り込むだけでいっぱいだった。お母さんが作ってくれたお弁当はきっとテーブルの上に置いたままだよ」
急いでいたから忘れてしまった。
きっと、お父さんもお母さんもテーブルに置いたままのお弁当を見て忘れたことに気づいたことだろう。
そして、お母さんは私にお弁当を渡すのを忘れたと騒いだことだろう。
今日のお弁当はなんだったのだろうか。
帰ったらちゃんと食べるからね。
だけど、夕食が食べられなくなるか。
それは、それで嫌かもしれない。
「学食か。なら、新メニュー食べてみない?前から気になってたんだよね!先輩に聞いたんだけど、凄く美味しいらしいよ。値段もお手頃だし。まぁ、学食だからどれもお手頃だけど。人気メニューになりつつあるらしいよ。唐揚げ定食が負けちゃうかもね」
「へ〜ぇ」
料理関連の学科があるため学食はとても力を入れているらしく、味は最高に美味しい。
そして、値段が安いし。
学生にとって値段が安いのはとても助かることだろう。
財布に優しいのは好きだ。
「早く並ばないと。絶対混むからね。授業が終わったらすぐに行かないと」
「そうだね。並んで席を探して食べて、それだけの行動なのに結構時間かかるから」
お昼の時間になり学食に行くとすでにたくさんの生徒でいっぱいだった。
ちょっと遅かったか?
メニューを見るとチーズハンバーグ定食が増えていた。
これが新しいメニューなのだろう。
「凄く美味しそう。ご飯とサラダとスープ付きだって。サラダ付きは嬉しいよね。野菜不足だったし」
確かに美味しそうだ。
食券を買って長い列に並ぶ。
すると、少し前に日向の姿が見えた。
どうやら、彼も学食らしい。
その両隣には可愛い女子がいる。
一生懸命、彼に話しかけているが本人はあまり聞いていないようだ。
なぜ、嫌だと言わないのだろうか?
言葉にするのも面倒なのか?
「新しいのってなんか唆るよね。私、コンビニとかで新商品とか買っちゃうの。なんか、新しいって聞くとねぇ。惹かれるよねぇ。味は不味いのもあるけどさ。試しに買ってみるかってなるんだよね」
「大塚さんは戦略に弱いタイプだね。それ、騙されやすい人だよ」
「え”っ!?」
順番がきて料理を受け取り、空いている席を探すがなかなか見つからない。
外のテラス席もいっぱいだった。
相席するしかないか。
いや、相席する席もなかったらどうしようか。
「椎名さん!!こっち!」
大塚さんの声が聞こえて、そちらを振り向くとどうやら席を見つけたらしい。
そちらの方向に向かって歩くと、次第にその場所が見えた。
2人用の席で窓から入ってくる太陽の光が燦々と当たっている。
眩しそうな席だな。
そして、その席の近くに日向とその取り巻きがいた。
結構近いな。
話し声が聞こえそうだ。
「暑そうな席だけど。先輩が食べ終わったからって。やっと食べられる。冷めたら美味しくないよ。熱々で食べたいよね」
大塚さんは席に座って食べ始めた。
私も席に座って食べる。
黙々と食べる私達だからなのか、アホな会話が嫌でも聞こえてくる。
しかも、日向の声は全く聞こえない。
まぁ、声を出していないのだから聞こえるはずないが。
アホな会話をずっと聞いていると段々と笑えてくる感覚になる。
笑ってはいけないと分かっているのだが。
もしかして、ここに座っていた先輩方はアホの会話を聞きたくなくてすぐに退いてくれたのかな?
そんなことを考えてしまうくらいアホの会話だ。
日向は相手にしていないのに、それでも話しかけることをやめない。
彼女たちには諦めるという言葉を知らないのかもしれない。
無視をされてもいいのだろう。
いや、普通は嫌だと思うけど。
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