第16話

本格的に寒くなってきた季節。ふぅ、と息を吐けば白く指先はひんやりと冷たくかじかむ。


このまま帰るのもいいけど。いや、本当は疲れてるからさっさと帰りたいけど、空腹もあって近くのファミレスに足を向けた。


「ご注文は――」


適当に頼んだハンバーグ。おいしいとかそんな感動はなかった。あたしが食にありつけるのは誰のお陰か?って思うと急に不味く感じるし、そのお金の元では誰が稼いだもの?って思うと吐き出したくなった。


それでも必死に堪えて胃袋に収めるしかないのは生きていくには必要なことだから。


何もかも捨てて一人で生きていくにはあたしにはまだ厳しい世界だから。


ふと、隣の席に目を向けた。


「えーマジで?彼氏出来たの?」


「うん、同じクラスの人なんだけど」


「えぇー!そんな感じしなかったけどなぁ」


顔を赤らめながらも楽しそうに恋バナに花咲かせる女子高生を見て羨ましいなって思った。あたしだって普通に学校に行ってればあんな風に、誰かと恋バナしたり放課後の帰り道にお茶したりしたんだろうな。


肩書は現役女子高生だけど、実際は中卒。


年齢だけが女子高生。

だから制服なんてものはないし、借りれる友達も居ない。


この街であたしを知る友達は誰一人居ないんだ。

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