第15話

あの人に呼ばれてあたしは重い足をただただ前へと動かす。ロボットみたいにぎこちなく歩み寄るあたしに顔をしかめて舌打ちする。


「リオ、今日はもういい。俺等は飲み行くから先に帰ってろ」


「うん」


「ほらよ」


そう言って手渡されたお札にあたしはガッカリした。


今日の収入は割と良かったはずなのに、渡されたお金はたったの1万円だけ。個別の3万はポケットの中にあるけど、カモが何も言わなかったから気付かれてない。さっきのカモからはいくら絞ったんだろう。


ヒロが持つ封筒には厚みがあるから20はあると思うけど、一晩で消えるんだろうな。考え無しに使い込む癖は直した方がいい。後先考えないから後が無くなる。


それでも、あたしが身体を売って稼いだお金はすべてこの人のモノだって、当たり前に分かってるけど、


「何不満そうな面してんだよ」


「べつに」


全部こうなったのはお前が悪い。と言いたげな顔で睨んでくるから、言い返したい言葉があっても黙って踵を返した。サツキと一瞬だけ目が合ったけどすぐに逸らした。


「サツキ!キャバクラ行くぞ!」


「あぁ」


上機嫌にサツキに声を掛けるヒロは振り返った時にはもう姿は見えなかった。きっと帰りは朝だろう。

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