第14話

周囲に人気がないのを確認するとため息混じりにあの人に目を向ける。


「なに」


「今日はもう帰れ」


「そうしたいけど、帰っていいの?」


「あぁ。ヒロには言っておく」


「そう。何て言うの?」


「生理になったとでも言っとけ」


「……無駄な嘘は迷惑でしかないんだけど」


ヒロに嘘はつけない。

すぐにバレる。だから意味ないし無駄だってこと、それをサツキは知らない訳じゃない。


「リオ!」


「……呼ばれてるから」


捕まれたままの手を離してもらいサツキの横を通り過ぎる。何か言いたげな顔をしてたけど関係ない。


ヒロの前じゃサツキも別人だから知らないのも無理ないけど、あたしの前じゃ違う。


無駄な心配をしてくるサツキ。


その癖に逃げ出さないように縛り付けてくる。

「分かってるな?」って目をしてあたしに釘刺す。


そんなサツキが一番わかんない。

ヒロよりサツキが一番こわい。


なに考えてるか分からないし、どうしたいのかハッキリしない態度に腹が立つ。


傍観者で居たいのなら貫けよ、って思う。

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