第11話

路地であたしに絡みついてきたもう一つの影がスッと音もなく隣に現れる。白い肌にふわふわしたマッシュヘアから可愛さを含んだ目が不安そうに見つめた。華奢な身体を隠すようにダボっとしたパーカーからは煙草の匂いが漂う。


「トラブったら連絡しろ」と耳元で告げてくる言葉に黙って頷く。


「サツキ!時間潰しに飲み行くぞ!」


「あぁ」


サツキ、と呼ばれた影の1人があたしに「わかってるな?」と釘を刺すように横目で悟らせる。


あたしがバカな真似しないようにだってことは分かってるけど、このまま逃げ出したかった。


もう何もしたくない。

だけどやらなきゃすごく怒る。


「きみ、一人?」


「うん」


何もしたくないのに何かしなきゃならないのは、こうして声を掛けてくるカモが腐るほど居るから永遠に続けられる。


だから終わらないんだ。

いつまで経っても。


目標金額があるわけじゃないから、お金はあればあるだけいいから、いつまでも続けてるんだ。

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