第10話

「何?じゃねーよ。出すもんあんだろ」


ウソ、前言撤回。ご機嫌な振りして残りのお金取ろうとしてただけだった。多分オッサンがあたしにお金渡したことを言ったからだ。


「……うん」


「さっさとしろよ」


舌打ちをされて焦りながらポケットから3万円を出して渡すと「10万か」とまた舌打ちをした。


財布に7万、あたしに3万で合計10万ってことは分かってるけど、十分な金額だと思う。それなのに満足していないのか、辺りを見回してカモを探すような目をする。


「あの、さ……今日はもう」


「次はあの辺に立ってろ」


「うん」


……シたくない、と言えず飲み込んだ言葉に誰も気づいてくれない。気分が乗らなくて辛いの、なんて意味分かんない理由はハナから聞いてもらえないけど。


「2時間ありゃいいだろ?」


「うん」


「次は反対側のラブホ使え。合流は表でいい」


「分かった」


言われた通りに動くことしかできないし逆らえない。


あたしはマリオネットだ。

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