第9話

「ちょー傑作!見たか?あのオッサン泣いてたぞ!」


「マジかよ。くっそウケるわ」


路地から出て表通りに入るとオッサンを囲んでた影達がドッと笑い出す。バカにしたようにオッサンの話をして歩いているのを後ろからジッと見ていた。


なんなら逆上したオッサンに刺されて死ねばいいのにって口には出せないけど、本気で思った。


路地から発狂して出て来て、万年筆でブスりと背後から突き刺して、馬乗りになってボコボコにしちゃえばいい。


そうすればいくらかオッサンの気も晴れるだろうし、あたしも罪悪感なく奴等を始末出来る。オマケの影達は反吐が出るほどクズなクソガキだから、社会のために死んでくれ。


「リオ!」


お金を取った影が遠くからあたしを呼ぶ。

明かりに照らされ影がスッと消えていく。


傷んだ茶髪にツーブロのソフトモヒカン、耳にはゴテゴテのピアス。一歩近付けば健康的な肌色に細くてもガッシリした体型だと分かる。男のクセに綺麗な二重をして、艶かしい形をした唇で「お疲れ」と言う。


ニッコリとご機嫌な顔で手招きするから、あたしもホッとして「なに?」と返事をした。

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