第8話
一部始終が残された動画を見せられて固まるオッサンに影が再び手を差し出すと、嵌められたと言わんばかりに「クソ女」とあたしへ舌打ちを漏らした。
ついさっきまでゲロ甘な時間を過ごしてやった相手にクソ女って酷くない?
オジサン幸せ~とか言ってたのに?
あたしの所為だとイイ大人が責任転嫁するの?
「酷いなぁ」と小さく漏らすと首に回っていた腕が緩み、もう一つの影が揺れた。
「くそっ、何でこんな……」
オッサンが内ポケットから財布を取り出すとそれをひったくるように奪い「シケてんな」と悪態ついて札を抜き出す。
顔面蒼白で棒立ちするオッサンに空になった財布を投げつけ「次から気をつけろよ」と、お金と一緒に抜き取った名刺をひらひらさせて暗い路地に消えていく。
漸く終わった、と息を吐くあたしの後ろで「行くぞ」と声が掛かった。いつの間にか離れてた腕の所為で首元に冷たい風が入り込む。
「――……うぅッ」
「警察に行っても無駄だからなぁー斎藤さぁん」
何処からかそんな声が聞こえると、オッサンはその場に座り込んで泣き出した。その姿は可哀想に見えたけど、自業自得だからあたしは何も声を掛けずにその場を後にした。
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