第8話
「ニーナ、起きて」
「んん」
「ほら、早くしないとまた食いっぱぐれるよ」
「……餌?」
「そうだよ、早く食べな」
あの男がいつ帰ったのか、いつ自分がここに戻ってきたのか覚えてない。
ただ餌の時間まで寝てたってことは相当時間が経ってる。1日1回の餌の時間は仕事が終わってすぐだから、多分1回は逃してると思う。
長い時間をあの男と一緒に居て頭が痛いくらい寝てたからきっと1日仕事してない。
その証拠に
「217番は抜きだ」
あの意地悪い男がざまぁみろと餌を取り上げた。
「餌ください」
「昨日仕事してねぇのに食えると思うな」
「……はぁい」
ここで逆らうほどバカじゃないと思う。逆らえば痛い思いをするわけだし。
ぐぅぅとお腹が鳴るのを堪えながら皆が食べる餌を眺めてた。
ここに分けてくれる優しい人は居ない。自分の食べる分しかないものを誰かに半分分け与えるなんてことは絶対にしない。
優しくしてくれてる先輩だって餌は別だ。
「悪いね、ニーナ」
「今日頑張れば明日食えるよ」
「1日休んだもんねぇ」
「水で膨らませな」
声は掛けてくれるけど絶対に分けてはくれない。
水より冷たい場所だ此処は。
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