第7話
いつもの練習はこうじゃなかった。
「もうやだ、練習やだ」
「お前がやれって言ったんだろ」
「こんなの知らない!練習じゃない!」
「んなもん知らねぇよ」
ジタバタと足を暴れさせて後ろに下がるあたしを追う様に指先を沈めてくる男は、最初よりも楽しそうな顔をしている。
ガクガクと腰が震える度にふわふわした感覚がつま先から頭に突き抜けていく。
痛みとは違うその感覚が初めてで、いつもの仕事では感じた事のない痺れに戸惑うばかりだ。
「こんなの練習じゃない!」
「これも一種の練習だろ」
「違うっ!あたしに乗って出したら終わり!それ練習違う!」
やだやだ、と腰を引くあたしは何度も身体を震わせ、声が枯れるまで意味も無く叫んだ。全身がだるくなって疲れた頃にようやく男も練習をやめてくれた。
「指がふやけちまったじゃねーか」
舌打ちをしながらタオルで指を拭く男は、ちょうど部屋に入ってきた男に「これいくら?」とあたしを指差して聞いた。
「当店はどれも非売品ですので申し訳ありません。しかし常連になれば話は別です」
「……なるほどな」
ニヤリと笑う口許をボーッと眺めてたらいつの間にか真っ暗な世界に入ってた。
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