第5話
座れと言葉にしてくれれば座るくらいは出来たけど、あたしには視線一つで物事を理解出来る頭がないから、いつものように薄い布切れの紐を肩から落として足元に輪を作って脱ぐ。
布1枚しか身に纏ってないあたしは素っ裸だ。
客の足元に跪いて見上げると男は眉間に皴を寄せ、今にも怒鳴りそうな顔であたしを見下ろす。
「性教育だけは一丁前に受けてんのか」
よく分からない言葉を並べて喋る男はますます眉間に深い皴を寄せる。
その仕草に怖いと思った。
また痛い思いをさせられると思った。
だから急いで客のズボンに手を伸ばして震える指先でベルトを外そうとすると――
「わっ」
その手を掴んで男の隣に引き上げられた。
「何もしなくていい。俺に触るな」
男に股を広げた状態で間抜けな格好をしているあたしに興味もないようだ。
普通の客はすぐに乗っかってくるけど、この客は「股を閉じろ」と足を軽く叩いて側を離れた。
ベッドの方に行き腰を降ろすと胸ポケットから臭いやつを出して咥える。
何がなんだか分からないけど、これじゃあ仕事にならない。
仕事をしないと食べ物をもらえない。
そうなるとお腹が空く。
痛いの次にお腹が空くのは嫌い。
「やだ、仕事する」
「あ?」
「餌、もらえなくなる」
男が居るベッドに駆け寄り無我夢中でベルトに手を伸ばすが払い避けられた。
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