スパンコール5

第5話

「それでね、常磐さんってば引っ越してきたばかりで、しかも洗濯機が壊れちゃって困ってて、そしたら偶然うちのコインランドリー見付けて、私が店番のときに…って運命だと思わない!?」


「はいはい。頼むから針刺すなよ」


「もうっ! 聞いてくれたっていいじゃん!」


仮衣装ができたので灯里ちゃんに着てもらい、微調整のためにまち針を刺していく。

次のライブまで間もない。

家に帰ると店番以外の時間はほとんど衣装作りに充てている。おかげで毎日寝不足だ。


「ほら! こんな感じでどう?」


「おっ、いい感じ」


テーマカラーは黒にして、だけどデザインで個性が出るようにした。

メンバーによってアシンメトリーにしたり異素材を使ったり、なかなかいい出来だと思う。


「常磐さん、常連になってくれたの! ときどき毛布とかタオルケットとか、あと衣装も洗いに来てくれるんだよ! もう最高!」


「あのさあ」


「でね、私のことも依ちゃんって呼んでくれるの。憧れの常磐さんに名前呼んでもらえるなんて」


「依」


灯里ちゃんが強い声を出したので、私は動きを止めた。


「言いにくいんだけど」


私は構えた。

灯里ちゃんが真剣な顔をしている。

こういうときは、なにか大事な話をするときだ。


「常磐さんってさ」


うん、と私は小さく相槌を打つ。


「引っ越しの理由、離婚だって知ってた?」


私は息を詰めた。


「しかも常磐さんが原因だって噂。一応教えとく」


「……うん」


私はなんて答えればいいか逡巡したのち、


「生きてればいろいろあるよね」


と、苦笑いで締めくくった。

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