スパンコール4

第4話

改装したばかりのコインランドリーのカウンターで、私は次のTOMOSHIBIの衣装案を練っていた。

服を作るのは好きだ。

独学だけど洋裁も和裁も一応できる。

今日も自分で作ったワンピースを着ているし、どこで買ったの?と聞かれることもしばしばだ。


スケッチブックにデザイン案を描いては消して、を繰り返しながら、半分は常磐さんのことを考えていた。

次のTOMOSHIBIが出るライブには5組のバンドが参加するらしい。

その中に「昼の月」の名前もあった。


常磐さん。

あの開演前の独特の緊張感を一瞬で払拭した、明るくて楽しそうに歌う、ロックバンドのギター&ボーカル。


お客さんたちは大盛り上がりで、たった2曲なのにアクセル全開、パワフルな演奏がたまらなくかっこよかった。


この気持ちが、アーティストとしての常磐さんを好きなのか、それとも恋愛的な意味で好きなのかは分からない。

なにせ私は恋をしたことがなかったから。


もう一度話してみたいと思う。

それにはまずライブハウスに行かなくてはならない。

ということはお金が要る。

だからこうやって、親の言いつけを守って労働しているわけだけど――。


「すみません」


カウンターの前でお客さんの声が聞こえたので、はっと意識が戻された。


「ここって下着類も洗っていいですか?」


「はい、ネットに入れていただければ――」


見上げるとそこにいたのは。


「常磐さん!?」


「あれ、きみ……確かこの前、ライブハウスで」


「覚えててくれたんですか!?」


「ああ、やたらノリが悪い子がいるなって」


「ちがっ……あれは!『昼の月』がすごすぎて!」


「ははっ、ありがと」


常磐さんは照れたように笑い、で、まず洗濯物なんだけど、と困ったように大きなビニール袋を持ち上げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る