Case 1 バスカヴィル家の魔物①

 3日後の夜――。


 屋敷の応接間に、8人が集まった。


 容疑者が6人と、語り手である私。

 そして、私をここに連れてきた張本人であり、すべての元凶であるドワーフが1人だ。


 部屋の中央に歩み出て、ドワーフは言った。

「さて、皆様にお集まりいただいたのは他でもありません。事件の真相をお伝えするためです」


 馬子まごにも衣裳とはよく言ったものだ。

 たとえドワーフでも、黒い燕尾服を着ていれば紳士然として見える。

 もじゃもじゃの真っ赤な髪をシルクハットで押さえ込み、やはり真っ赤な顎ひげにも手入れが行き届いている。

 左の眼窩がんかめた単眼鏡モノクルが、理知的な雰囲気を漂わせていた。


 ドワーフらしさは――泥だらけになって洞窟に住まう粗野な種族という印象は――そこにはない。

 腹立たしいほど文明的な姿である。

 とはいえ、背丈はヒトの10歳児ほどしかない。

 腕や脚のはち切れんばかりの筋肉が、衣服の上からでも分かる。


 集まった人々の顔を順番に眺めながら、彼は続けた。


「この屋敷のご当主クロード・バスカヴィル卿を殺害した真犯人は、この中におります」

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