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さやかからのメールから2週間が経ち、今日は4月15日。貴子の23歳の誕生日を迎えることとなった。貴子は、日本タイトル初防衛戦へ向けてジムで練習に励んでいた。当日は、プロテスト受験に向けて愛理奈が昼から練習に出ており、貴子は愛理奈のスパーリングパートナーを受けていた。スパーリングが終わって間もなくして、さくらが学校が終わってジムに練習に来た。さくらがトレーニングウェアに着替えると、貴子を呼んでミット打ちの練習に励んでいた。しばらくして、私服姿の高校生くらいの風貌の女の子がジムにやってきた。
「すいません。出稽古に来ました。」
と、高校生くらいの風貌の女の子が言うと、
「もしかして、出稽古に来るとメールを私にくれたさやかちゃん。」
と貴子が聞くと、
「はい。そうです。」
と答えた。
「出稽古に来るの待ってたんだよ。」
と貴子が言うと、
「はじめまして。セーラーマーズジムの塩見さやかです。」
と、貴子にあいさつをした。
「メールでやり取りしているから、さやかちゃんが高校時代に四国では名の知れた選手ということは聞いてるよ。高校生の全国大会への出場経験もあるみたいだからね。今までの実力から見て実力ありそうだね。スパーリングできそうなので着替えてくる?」
と貴子が言うと、
「はい。」
と、さやかは答えたため、貴子はロッカールームにさやかを案内した。さやかが着替えてロッカールームから出ると、ジムのリングでスパーリングをするため、さやかにヘッドギアを用意した。
「さやかちゃんは、これつけて。」
と、貴子がヘッドギアを手渡すと、さやかはヘッドギアを被ってスパーリングの準備に入った。
「私はプロで戦っているからギアなしでスパーするよ。」
と貴子は言って両者のスパーリングが始まった。スパーリング中、さやかのパンチ力を見て、さやかが将来的に有望な選手であることを貴子は感じた。スパーリングが終わって、さやかはヘッドギアを外した。
「さやかちゃん。プロを目指すの。」
と貴子が聞くと、
「はい。目指します。」
と、さやかは答えた。
「実力から考えたら6回戦デビューでも通用するね。ルール上では4回戦からになるみたいだけど、しっかりとがんばって日本タイトル挑戦できるように。待ってるよ。」
と、さやかの実力に貴子は惚れ込んでいた。貴子とさやかのスパーリングを見ていたさくらは、さやかにジムのことについて聞いた。
「セーラーマーズジムといえば新しくできたジムですよね。」
と聞くと、
「そうだよ。親元から離れて地方からプロを目指す女子の衣食住に対して手厚く、ジムの会長さんの実家が不動産屋ということでアパートの家賃も安くしてもらえるんだよ。」
と、さやかは答えた。
「もしかして、女性専用のジムですか。」
と、さくらが聞くと、
「違うよ。私の入っているジムは男子も入会できるんだよ。だから、ジムで練習している仲間は男子の方が多いんだよ。だけど、男子選手が所属するボクシングジムの衣食住に関しては寮を持っているジムもあるが、だいたいのジムが男子寮で女子は寮に入れないみたいだよ。地方出身の選手に対する衣食住の男女格差をなくしたいと私のジムの会長は言ってたね。だから、うちのジムは男子も所属できるジムの中では女子の割合が高いんだよ。さくらちゃん。うちのジムに出稽古に行く機会があったら行ってみる?」
と、さやかが言うと、
「ここのジム出稽古に行きたいね。」
と、さくらは答えた。
「さくらちゃん。ここのジムへの出稽古。行ってみたら。ジムの会長は元プロボクサーの松島理佐子さんでしたね。私がプロデビューしたばかりの頃は現役でやっていましたね。同じフライ級の選手だったけど、最終的にはリングで対戦しないまま、あっちは現役を引退したんだよ。現役時代の戦績では他のジムの会長さんと比べて見劣りするけど、なんだか指導者としてはいい指導者となりそうだな。私も、この人が経営するジム、見学に行きたいね。試合ではグローブを合わすことはなかったけど、一回スパーリングやってみたい。」
と貴子は言った。そういった話のやり取りの最中に、2年半ぶりに真理奈が練習に復帰してきた。練習復帰の初日には1歳半になる娘の理央を抱いてやってきた。
「育児の方は主人の方も協力してくれるということで、今日から練習に復帰することになりました。」
と真理奈はジムのみんなにあいさつをした。そして、ちょうど同じ時期、春樹のいとこの春菜も新米保育士としての第一歩を踏み出した。米国に武者修行中の麗香は、世界タイトルマッチ挑戦が近づき、近々、帰国の予定との知らせが届いた。貴子も6月末には初防衛戦が近づいてくる。貴子とかつてグローブを合わせたライバルだった有美が貴子の初防衛戦が近づきジムの方へと顔を出した。
「次の吉見貴子の初防衛戦から原島ジムのトレーナーとしてお世話になります武田有美です。よろしくお願いします。」
と、貴子と真理奈とにあいさつをした。これからは、貴子と貴子の姉貴分の有美との二人三脚で次なる目標を目指すこととなった。次の目標は世界タイトルマッチ。そして、世界チャンピオン。がんばれ、貴子。
(END)
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