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それから2週間後、昼休み中の保育園の職員室での出来事だった。この日の瑞希は、いつも以上の上機嫌だった。

「来週いっぱいで息子のリハビリが終わりになって、正式に他の部員と同じ練習メニューで練習できることとのことなんだよ。そして、もう1つ。昨日の試合に勝ったことで、来年の春のセンバツに、うちの息子が通っている西浜学園野球部が出場できることがほぼ決まりとなったんだ。来週以降、また、関東大会のベスト4以降の試合があるんだけど、この大会で優勝したら、11月中旬に神宮球場で行われる全国大会に行けるんだよ。監督さんは、11月に行われる神宮球場での全国大会へ進んだら、うちの息子をベンチ入りメンバーに入れる予定とのことなんだよ。」

と瑞希は自分の息子のことを自慢した。

「良かったじゃない。昨日は日曜日で休みだったし、丸1日予定がなかったので、テレビ観ながらゴロゴロしていたんだ。夕方の5時くらいだったかな。家にいる時は、ほとんど使わない携帯電話の発信音が鳴ったんだよ。家で1日ゴロゴロしている時にケイタイの発信音が鳴ったんで、どうせ怪しいのじゃないのかと思って確認したら、光良君からのメールだったんだよ。着信メールを開いたら、関東大会ベスト4進出のことだったんだよ。メールの相手が光良君だったんで、後で返信したよ。そう言えば、光良君。ケガの時に、お世話になった病院の看護婦さんやリハビリテーションの先生にも報告したとのことも、オレの方へのメールには報告があったんだぜ。」

と春樹は言った。そういえば、西浜学園野球部の県大会3位決定戦の翌日に、春樹と瑞希と光良の3人で食事に行っており、それ以降は春樹と光良はメールを交換する仲になっていたのだった。

「昨日はテレビでJリーグ中継があったんで観てたんだろ?」

と、薫が言うと、

「オレ、観てたよ。」

と春樹は答えた。

「2人共、テレビのことはともかく、あそこの病院のリハビリ担当の先生、高校時代は野球部だったんだよ。仕事が空いている時間に時たまキャッチボールの相手もしていたとのことを光良から聞いたよ。」

と、瑞希はリハビリテーションの先生のことを言ったら、

「そうなの。」

ト、春樹は返事をした。

「うちの息子の高校の野球部の試合は来週の日曜日にあるんだけど、予定は空いているの。」

と瑞希が春樹に聞くと、

「今のところは予定はないけど、試合は何時開始予定になっているの。」

と春樹が聞くと、

「1時半開始予定よ。」

と瑞希が答えたので、

「第1試合の試合状況によっては開始が遅れるということもあるので、暗くなってからの帰宅になると両親が心配するので次の機会にお願いしますさせてもらうよ。」

と春樹は答えたのだった。

 それから1週間後、西浜学園野球部は、秋の明治神宮大会進出を目指して関東大会のベスト4に挑んでいた。第1試合が延長戦となったため、予定時刻より1時間遅れの2時半の試合開始となった。試合開始前のダッグアウトの中で、

「今日対戦する相手は、うちが勝つためには投手戦にしなければいけないだろう。対戦相手の華月学院のエースの戸田は今大会失点はわずか2点だ。プロのスカウトが注目していて、来年のドラフトでは、獲得指名する球団が少なくとも2つから3つあるとのウワサが流れている好投手だ。今年の夏の大会では埼玉県代表で甲子園も経験している高校が相手だから、横綱の胸を借りるつもりで試合をしろ。」

との監督の平田からのひと声があった。試合開始前に両チームのキャプテンが先攻後攻のジャンケンで勝った西浜学園が後攻を選び試合が始まった。1回は両チームのエースが3人で攻撃を終わらせた。2回も西浜学園の先発投手としてマウンドに上がった谷本光が4番打者の宇都宮洋輔をフォアボールで1塁に出しただけで、この回も無得点に抑えた。その裏の西浜学園の攻撃は4番の長野からの打順だった。ボールカウント2ボール1ストライクからの4球目だった。華月学院のエースの戸田雄介が投げた球が長野の狙っていたコースに来たのでバットをフルスイングした。ボールはバットに当たり、センター方向へと打球は伸びてバックスクリーンへとボールは到達した。両チームを通じての初ヒットは長野のホームランで西浜学園が1点を先制した。2回までが終わって1点を追いかける立場となった華月学院のベンチの中では、この回の守備が終わってベンチに戻ると、

「まだ2回だろ。とにかく、まずは1点を返そう。」

と、宇都宮が戸田を元気つけさせた。次の3回以降、試合の方は西浜学園のゲームプラン通りに投手戦という形で試合が進んだ。試合開始が予定時刻より1時間遅れの開始となったため、6回以降は野球場の6基の照明灯に灯がついた。

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