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「試合が決まったんだってね。長野さん。息子さん、秋の県大会で特大の場外ホームラン打ったんだってね。西浜学園、この秋以降のチームは本当に強いというウワサで、野球好きの中高生の練習生達の間でウワサになっていたよ。また、来週も息子さん試合だってね。この試合に勝てば関東大会に進出するんだってね。勝ってほしいね。今、光良君、スコアブックつけているんだよ。」

と西浜学園野球部のことについて寛子は話した。

「そう言えば、寛子ちゃん。西浜学園の野球部のメンバーの前では、いいところ見せられなかったよね。今度の試合、寛子ちゃんがKO負けした相手の吉見貴子と11月に試合をすることになっているんだけど、ここ最近、この相手、ものすごく強くなっているみたいね。」

と、明美が寛子に聞くと、

「確かに。以前と比べて強くなっているよ。意中の男性にフられてからは、タイトルマッチ以外はすべて勝っているとの話を大西ジムの大久保杏奈から聞いている。それに、私は吉見貴子を相手にKOされてしまったので、試合を観に来ていた西浜学園野球部のメンバーの何人かを泣かせてしまったんだ。それに、私が試合をした日のアンダーカードのうち、男子フェザー級10回戦では、KO負けした選手が担架に乗せられてリングをあとにして、救急車で病院へ運ばれるというワンシーンもあったんだよ。後で聞いた話だけど、その選手亡くなったとの話。彼の死因となったケガ、光良君が野球の試合中になった急性硬膜下血腫だったのだよ。このシーンを私は試合をする前に見てしまったから。それに光良君。医者からは他のスポーツに転向する場合、格闘技についてはジャンルによってはドクターストップになっているものもあるとの話だから。それに、光良君を誘ってデートに行ったら、光良君、私のこと、まんざらじゃないみたいだから。ここ最近、私の学生時代の友達も付き合っていた彼と結婚したりして、結婚式に呼ばれたりもする。私はプロボクサーとしての人生を送って、家族に心配かけさせている。だけど、私は、もっと強くなりたい。ちなみに、うちの両親からは早く結婚しろ。と度々言われているんだよ。」

と答えた。

 女子高生2人のジャッジは共にお手柄劇から2週間後、西尾ジムの方に1人の女子高生がやって来た。

「会長さん、おられますか。」

と言って、その女子高生はジムの中へと入っていった。

「もしかして、うちの真也の友達の茉美ちゃんじゃないの。」

と、ちょうどジムでサンドバック打ちをしていた明美が練習を止めて答えたのだった。

「もしかして、入門希望なのか。会長なら会長室にいるで。」

と、茉美は同門の男子選手から会長室へと案内された。しばらくすると、会長室から西尾会長と共に茉美が出て来て更衣室へと案内された。トレーニングウエアに着替えて更衣室から出た茉美を会長が見たところで、練習中のジムのメンバー達を集合させた。

「今日から、うちのジムで練習生として新しく入ることとなった川本茉美さんです。明美ちゃんは知ってるよな。以前、盗撮犯を捕まえて警察から表彰された2人の女子高生の1人なんだ。ここに来る前は空手をやっていて、実は彼女、空手は二段の腕前なんだ。」

との紹介が西尾会長からあった。

「川本茉美です。よろしくお願いします。」

と、ジムのメンバー達へあいさつをした。茉美の自己紹介が終わって、ジムのメンバー達はそれぞれの持ち場へと戻っていった。その直後、寛子は茉美に声をかけた。

「小笠原寛子です。はじめまして。ジムに入って来た時の制服姿見たよ。東京の翔栄学園に通っているんだね。」

と聞くと、

「はい。そこの高校に通っています。」

と、茉美は答えた。

「茉美ちゃんが通っている高校。女子バレー部が強いんだってね。」

「うちの高校の女子バレー部でしょ。確かに強いよ。全国大会でも優勝した経験もあるし、OGには多くの全日本代表選手を輩出しているんだよ。」

「茉美ちゃんはバレーボールするの。」

「遊びでたまにやるくらいかな。」

「そうなの。実は、うちのジムの看板選手のうちの1人で女子アトム級の日本チャンピオンの長井まどか。高校時代バレー部で全国大会も経験しているんだよ。ポジションはリベロだったとの話。彼女、高校時代に全国大会で翔栄学園と対戦した経験があるんだよ。」

「知らなかった。長井まどか、高校時代はバレー部だったんだ。」

こんな形で、寛子と茉美の学校の話題で盛り上がっていた。

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