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そして、いよいよこの日のメインイベントとなる男子ウエルター級の日本タイトルマッチ10回戦が近づいてきた。青コーナーから男子ウエルター級日本ランキング3位の宮沢が、赤コーナーから男子ウエルター級日本ランキング1位で宮沢の因縁のライバルの藤村雅紀が入場してきた。試合開始前に翔と春樹は、この試合に挑む宮沢にリングサイドから花束を手渡した。

「宮沢先輩。試合がんばってください。」

と激励のメッセージを送った。花束を渡し終えると春樹と翔はリングサイドの客席へと戻った。試合が始まった。因縁のライバル同士の戦いだけに序盤から激しく打ち合った。序盤の3ラウンドは互角の戦いになった。第3ラウンド終了後のインターバルで、

「相手が勝負をかけてくるのは中盤からだ。一瞬の油断が命取りになるぞ。とにかく今まで練習してきたことを忘れるな。」

と原島会長は宮沢に発破をかけた。案の定、次のラウンドから藤村は勝負をかけてきた。宮沢は藤村のパンチを首を振りながら巧みな動きで軽快にかわしていった。第6ラウンド、藤村の頭が偶然にも宮沢の顔面に当たり、右の眉の上を出血した。そんなハプニングにもめげず、宮沢は藤村をロープに追い込んでいった。相手は、かなりグロッキーになりかかっていた。このラウンド終了後のインターバルだった。

「いいか!!次のラウンドで片づけるぞ!!」

「はい。」

当然、宮沢だって次のラウンドで相手を倒すつもりだった。そして迎えた第7ラウンド。このラウンドが始まってから2分10秒が過ぎた頃、宮沢の左ストレートが藤村の顔面にヒット。ダウンを奪った。ニュートラルコーナーに下がった宮沢。レフェリーのカウントが始まった。そして、ついに10カウント目が。宮沢の因縁のライバル藤村雅紀を相手に7ラウンドKOで勝利を手にした。試合終了後、藤村が宮沢のところに歩み寄った。

「おまえ、本当に強くなったな。」

と言って握手を交わした。この日のイベントが終わってから東京都内のホテルで宮沢の祝勝会が行われた。祝勝会で春樹はビールを勧められたが、

「すいません。僕、お酒飲めないんですよ。」

と言って、ビールの代わりにオレンジジュースをコップの中に入れて飲んだ。翔も、この日は車で東京に来ていたため、お酒を飲まなかった。この日、春樹は翔の車で一緒に帰ることとなった。帰りの車の中で、

「宮沢先輩が見事に日本タイトルを手にして、夜中までお祭り騒ぎだったよな。次は世界へ向けての戦いか。楽しみだな。」

と春樹が言うと、

「その時には、また応援に行かないとな。」

と翔が答えた。2人はカーラジオから流れてくる『オールナイトニッポン』という番組を聞きながら家路に向かって夜道を走らせた。

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