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第36話
⑦
三井秀美が教壇に立っている西浜学園高校の1学期の終業式が行われた日のことだった。体育館での終業式が終わってからの1年生のある教室の中で、麗奈が顧問を担当する鉄道研究部に、この春入部した2人のうちの1人の村口碧という男子生徒のクラスの教室の中で、彼の後ろの席に座っている男子生徒が大の格闘技好きということもあって、三井秀美が8月末に後楽園ホールで試合をする情報を聞きつけていたのだった。ホームルームが終了してから、鉄道研究部の集合場所となったある教室の中で、弁当を食べながら、秋に行われる文化祭の出し物についての打ち合わせが行われていた。そんな中、鉄道研究部の紅一点の相川恭子が、こんなことを言い出した。
「去年は、駅の周りの食べ物のことを中心に写真に撮って展示したけど、今年は、去年とは違う趣向の物を撮って展示しようよ。例えば、ネコの駅長とか。」
との提案があった。そんな中、
「オレ、この夏休み、和歌山に行く予定なんだ。和歌山電鐵貴志川線の貴志駅の駅長のニタマはオレが撮りに行こうか。」
と、碧が言った。
「和歌山は遠いよね。部の予算の問題もあるし、和歌山の方は村口君に、すべてまかせましょうか。」
との麗奈(赤松先生)からの意見となった。話し合いの結果、8月29日に日帰りの日程で、福島県の会津鉄道の芦ノ牧温泉駅のネコの駅長と芦ノ牧温泉駅まで行く行程の往路の東京~郡山間の区間の東北新幹線の乗車のプランとなった。学校が終わって、碧が帰宅の途につく道中、春樹の赴任先の保育園に久々に立ち寄った。ちなみに、彼の通学路でもあるのだ。実は彼、ここの保育園の卒業生とのことで、時々、園長先生に会いにやって来ていたのだった。春先のことだったか、ひょんなことから春樹の彼女の麗奈の赴任先の高校の生徒として碧が入学した。鉄道研究部に入部したということを春樹は小耳をはさんで聞いていた。それ以降、2人は友達として付き合うようになった。この春から、3歳児のクラスのいぬ組の担任として春樹と一緒に働いている美緒からも碧と春樹が鉄道マニア仲間として仲良くしていることを知っていたのだ。実は彼女、碧の兄の翔の同級生の河野美緒という人物だったのだ。ちなみに、美緒の家も保育園の近くにあって、時々、美緒の母親が保育園の前を通りかかって美緒の働いている姿をさりげなく見ていたこともあるとのことだ。園庭で子供と遊んでいた春樹に対して、美緒が園庭の門の前にいた碧を見て、
「久本先生に用なの。」
と聞かれて、
「はい。」
と碧は答えた。
「遠慮せんで入って来いや。オレが許す。」
と春樹は碧に言った。
「後の子供の世話は私がやるから行ってあげたら。」
と、美緒から言われた。春樹は碧のところへ行った。
「春樹先輩。8月の初めに3日ほど休みを取るつもりなんだろ。」
と碧に聞かれると、
「8月の最初の週末明けに3日ほど取るつもりだけど。」
と春樹が答えた。
「オレ、8月に入ってからすぐに和歌山へ行くつもりで、和歌山の母方の祖父母の家に盆明けまでの約3週間ほど滞在の予定でいる。あっちの家は、こっちの家と違って間取りが広く、広島にいるオレのいとこが2人ほど友達を連れて来て3日ほど祖父母の家で泊ったんだ。春樹先輩。もしかして、今回は和歌山に行くつもりだと聞いているけど、宿の予約はしているよね。」
と碧に聞かれると、
「宿の予約はしているよ。」
と春樹は答えた。それを聞いた碧は、
「春樹先輩。和歌山への出発日は2週間先だろ。今なら、宿の予約のキャンセル、キャンセル料なしでできるのではないのか。」
と言い出したので、それを聞いた春樹は、
「宿の予約のキャンセル。キャンセル料が発生するのは宿泊予定日まで残り5日以内になってからだよ。」
と答えた。
「じゃあ、キャンセル料がかからないうちに早く宿の予約のキャンセルしろよ。春樹先輩。和歌山での滞在は3日ほどだろ。うちの祖父母に頼んで部屋を手配するから。」
と碧は主張。最終的に、これで話がまとまり、8月の最初の週末明けに春樹は碧と3日間共に行動することとなり、この間は和歌山にある碧の母方の祖父母の家で泊まらせてもらうことも決まった。
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