第12話


 貴子にとっては、そろそろ高校卒業後の進路を決めなきゃいけない大事な時期となった。夏休みに入って間もない7月22日。この日は、プロボクシングのイベントが行われる日で、貴子と真理奈のサイン会がイベント開始前に行われた。この日は、いとこのちえみの同級生の小嶋有紀と小谷のりこの、それぞれのデビュー戦が組まれていた。そして、メインイベントでは、真理奈とグローブを合わせた玲奈が梨香に挑戦する日本女子ミニフライ級タイトルマッチも組まれていた。今回のイベントでは、セミファイナルでマナミが戦うということでCS放送でテレビ中継が組まれていた。一方、貴子の方は、卒業後の進路の兼ね合いから出場予定はなかったが、ライバルのマナミのことが気になっていた。マナミは、貴子との試合で敗れて以降は2試合連続KO勝利中だった。一方の玲奈は6月に幸二朗と結婚した。結婚後、初めての試合となった。試合前の健康診断で、玲奈は試合ができる健康状態だったので、この日の試合は予定通り出場することとなった。この日の試合のイベントの前半で、有紀とのりこが立て続けに登場した。有紀は、友達と約束した通り、胸元の露出の高いコスチュームで試合をした。試合は2人共白星でデビュー戦を飾ったが、特に有紀のリングコスチュームには客席がどよめくくらいの胸元の露出で話題となった。この日は、春樹は客席にはいなかったが、春樹の義理のいとこの睦が観戦に行っていた。睦は、春樹が産まれる5年前に大学を卒業して郵便局に就職した。実は、子供の頃から切手マニアで大の旅行好き。春樹とも、春菜と結婚して以降、まるで兄弟のような付き合いとなっていた。実は、睦の友達に、春樹と同い年のカメラオタクがいて、そのカメラオタクの友達と会うために、この日は、イベントの行われる会場へ足を運んでいた。実は、彼も鉄道マニアで、いわゆる『撮り鉄』。春樹のために、彼が1カ月前に鳥取に行って撮ってきた鬼太郎列車の写真を渡す約束をしていた。一方、春樹の方も就職先が決まった。就職先は、鎌倉にあるお寺の保育園に保育士として来年の春から仕事に就くことが決まった。この写真は、春樹の義理のいとこからの就職の前祝いともなった。ちなみに、春樹は7月31日に大阪から帰る予定となっていたからだったのだ。試合の方は、マナミが登場する場面に変わった。試合は、あっさりと1ラウンドKO勝ち。3試合連続KO勝利だった。いよいよ、秋の予定で麗香の持つ日本女子フライ級チャンピオンへのタイトルマッチ挑戦が、ほぼ決定的となった。メインイベントでは、最近、調子が上向きとなり、ランキングに手の届く位置まで来たしおりにとっての一番の目標となる梨香の防衛戦だった。しかし、4ラウンド以降、玲奈のペースに変わった。6ラウンドには一度玲奈がダウンを奪い、7ラウンド開始58秒だった。ついに、梨香はKOされた。試合が終わってから、梨香は立ち上がり、玲奈と抱き合って健闘をたたえた。

 大学は夏休みになり、春樹は横浜に帰ってきた。就職が決まった春樹は、いとこの春菜の家へと立ち寄り、睦から鬼太郎列車の写真を受け取った。

 一方の貴子は、秋に行われた専門学校の入学試験に合格した。12月に試合が組まれることも決まった。卒業記念となる勝利を目指し、再びジムへと顔を出してきた。

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