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第7話


 その年最後のプロボクシングのイベントの開始が刻一刻とせまって来た。出場選手は赤・青それぞれのコーナーの控室に入り、試合へ向けての準備が始まった。イベントの開始まで1時間を切り、会場の方も開門した。開門と同時に、お客さんがゾロゾロと客席に向かって行った。客席には、10月のイベントには観戦に行くことができなかった春樹の姿があった。隣には春樹と同じ高校のサッカー部のエースストライカーの瀬戸幸次朗の姿があった。幸次朗は卒業後、FC姫路というJリーグチームに入団した。春樹は学校が休みの日に幸次朗の試合のある日はたまにスタジアムの方へ観戦に行くこともあった。実は、幸次朗は玲奈と交際中で、近々、結婚の予定だったので、春樹は驚いていた。幸次朗自身、付き合うまでは玲奈がボクサーだったことを知らなかった。玲奈が、まだボクサーになる前のこと、当日高校1年生だった幸次朗に一目惚れして、何回かデートを繰り返し、後に交際することとなった。それから2年後、グラビア好きの神野直美から玲奈のプロボクサーデビューの情報が流れて、幸次朗が驚いていたことは無理はなかった。後で幸次朗に聞いたら、

「あー。玲奈は格闘技大好きだからね。神野から、そのことを聞いたときはびっくりした。玲奈の家と神野の家は近所だから早くに情報を知ったのかな。神野の彼女も格闘技好きらしいぜ。」

「そういえば、神野の彼女も格闘技好きだな。神野と付き合うまでは、俺にも付きまとって来たから。俺に向かってプロレスのキックのまねを痛くならない程度に軽くやっていたから。どうも、その彼女もボクシングの話題を出したら、プロになるとの話らしいよ。あと、彼女と一緒によく行動している小谷もプロボクサーを目指すみたい。アイツら2人、俺から見て1年後輩なんだが、その学年の藤原、情報を度々流していたみたいだから。」

春樹の口から、こんな話が出てきた。後ろには神野の姿が、

「小嶋と小谷のコンビ、今日の試合を観に来とるぞ。小谷がプロになりたがっているのは知っとるよな。なあ、なあ、なあ、なあ。春樹。もう1つ話があるんだぜ。オマエ告白したことのある吉見貴子が今回対戦する江藤の姉貴知っとるか。」

「あー。知っとるけど。」

「そういえば、江藤の姉貴のバスト90だぜ。」

「確か、身長174cmだったよね。それでライト級か。」

「DVD持ってるからどうだ。帰ったら見ようぜ。」

「あっ、悪い。明日以降にしてくれるか。」

「あー。今日はダメか。」

神野と春樹の2人の話のやり取りが行われていた。

「先月、ロシアの女子プロボクサーの試合が日本であったのは知ってるか。」

「あー。そういえば。」

「そっちはバスト92。胸元の露出の高いコスチュームで出場していて、試合中は度々胸の谷間が見えていたぞ。」

「オレ、スポーツ新聞で見た。」

こんな話のやり取りも行われていた。

「ボクシング界のシャラポワか。フゥー。」

幸次朗が思わず反応を示していた。

「悪いな。ちょっと、タバコを吸ってくるから席取っといてくれるか。」

「わかったよ。」

と春樹は幸次朗達に返事をして、幸次朗と神野は喫煙コーナーへと向かった。

 幸次朗と神野が喫煙コーナーへ行って席を外していた間の出来事である。客席の方では、小嶋有紀、小谷のりこ、坂井ちえみの3人が春樹の後ろの席に陣取り、春樹に話しかけていた。

「ハル。」

小谷から声をかけられた。

「やあ、のりちゃん。」

「ハル、胸見ないでよ。」

「あー。視線そっちに行ってた?」

「ハル。あんた、どうりでこの手のスポーツ好きだと思った。この秋からボクシング始めたんだ。」

「ハル、実はのりちゃん。この春に行われるプロテスト受ける予定なんだって。ワタシも当然受けるけど。デビュー戦が決まったら応援に来てよ。そういえば、ハル。のりちゃんの胸見たいだろ。ワタシモ、かなり胸元の露出の高いコスチュームで出場するつもりだから。多分、胸の方に視線が行くだろ。オイ。」

小嶋から、こんな情報を聞くこととなった。

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