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第5話


 貴子のプロデビュー戦から1カ月が経ち、貴子の学校でも文化祭に向けてクラスの出し物についてのホームルームが行われていた。そのホームルームの中で、ある女子生徒が、

「貴子のデビュー戦の試合のビデオを見せるのはどうだろうか。」

という提案があり、正式に文化祭のクラスの出し物として決定することとなった。このプランを提示したグループは、貴子のプロデビュー戦の日程が決まった7月ごろからこれを文化祭の出し物にしようと夏休み前から打ち合わせをしていた。試合当日も、写真撮影のカメラ班と、ビデオ撮影のビデオ班に分かれて、試合会場のリングサイドに主催者の許可をもらって陣取っていた。デビュー2戦目となった10月初めに行われた試合でも、そのグループは主催者の許可をもらってリングサイドに陣取り、撮影をしていた。試合の方は2試合続けてのKO勝ち。試合終了後、

「青コーナー吉見貴子選手の2ラウンド1分22秒KO勝ちでございます。」

というリングアナウンサーのアナウンスがあった。それから1週間半後に行われたホームルームで、文化祭のクラスの出し物についての題名についての話し合いが行われ、『女子プロボクサー・タカコのデビュー戦からの軌跡』という題名で文化祭のクラスの出し物となることが正式に決定した。11月に行われた文化祭も大盛況。サイン会まで行われるにぎわいぶりとなった。

 一方、しおりの働いている職場では、彼女の同僚の岩本真理奈が9月から練習生として入会した。真理奈としおりは同じスーパーのレジ係。真理奈は、この春入社した新入社員で、3月に定時制高校を卒業して正社員として、この職場に就職した。実は、彼女。麗香より2つ年上で、最初に入った全日制高校を1年で中退した。高校入学後、同級生からのいじめを受け不登校となり、引きこもりも経験した。一時期はフリースクールに通い、その後、定時制高校に入学した。麗香の試合をたまたま真理奈の同僚の格闘技好きの友達の渡辺明菜と一緒に観戦。真理奈の方がボクシングの魅力にはまってしまった。ちなみに、その友達の明菜は1カ月前に女子プロレスの団体からスカウトされて会社を辞めてしまった。明菜は新人オーディションに合格。近々デビューする予定となった。かつて少女時代に空手を習っていた経験があったこともあって、同じ格闘技の世界で自分を高めたくなった。それが、真理奈にとってボクシングを始める最大の動機となった。ちなみに、貴子の高校の文化祭は2日間にわたって開催。文化祭の2日目の午前中のみは、初日と同様に各クラスの催し物が公開されていたため、真理奈もここの文化祭に足を運んだ。あと1週間で真理奈のプロテスト。貴子の試合のビデオを観て刺激されたのか、プロテストでは相手をKOして文句なしの合格を果たしプロライセンスを取得した真理奈であった。

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