第82話

服をきて、トイレに行ってくるねと言った私を見送ったルイは、すごく機嫌が良さそうに思えた。


トイレの用事をすませ、部屋に戻ろうと階段を登ろうとした時、ふと、リビングの方にそれが見えた。



赤い髪。

深く、濃い赤い髪。

ルイ、リビングにいるの?



何度かルイのリビングにもお邪魔した事がある私は、そっちの方に足を進ませ「ルイくん?」と声をかけた。



けど、その背格好に何かの違和感がして。

ルイと思わしきその人が振り返った時、その違和感の秘密が分かった。


ルイじゃない。


けど、ルイとよく似ている。


私よりも身長は高いけど、


それでも、ルイよりかは小柄。




「⋯⋯俺、ルイじゃないよ。あいつなら部屋でしょ」



と、ルイじゃない宣言をした彼は、少しだけ黒よりも明るい目を、上へと向けた。


誰、


そんなの、簡単。


ルイと、ヒカルの、弟⋯?



「⋯ご、ごめんなさい、間違えて⋯」


「いいよ別に」



私から目を逸らし、リビングに置いているソファに座った彼は足を組み。見た事のある私が通っていた時の中学の制服からスマホを取り出した。



そして未だに見続ける私に、視線を戻してきた彼は、「⋯なんか用?」と、どうでも良さそうに聞いてくる。

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