第71話

ヒカルと会っていたから。

ヒカルに抱かれていたから。


⋯移り香⋯。

私がそう思った時、ルイの手が、私の髪を乱暴に掴んできて。「この髪は俺のだって、言ったよね?」と、「俺のための匂いなんでしょ?」と。



「奈都は、嘘つきなの?」



と、冷や汗が流れる私を無視して、ぐっと私を引き寄せてくる。



「ねぇ」


「奈都」


「俺の事、好き?」



好き、大好き。

ルイが大好き。

ルイが1番、大好き。


―――⋯でも、ルイの目が、怖かった。

いつもの甘い瞳の、ルイじゃない。



「⋯あ、たしは⋯ルイくん、だけ⋯」




震える声でそう言えば、ルイはいつも通りの柔らかい笑顔を向けた。


同一人物なのに、ガラリと変わった雰囲気のルイ。


そんなルイはまた、私に鋭い目を向けてきて。



「3度目は、ないよ」



そしたらまた雰囲気が変わったルイは、にこりと優しく笑った。

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