第70話
ヒカル?ヒカルの匂い?
ヒカルの匂いって⋯。
うそ、そんな、匂いって。
「ヒカルに会ったの?」
―――ビクリ、とした。
そう言ったルイの声は、すごく冷たくて。私を見下ろすルイの瞳が、怖かった。大好きなのに、大好きなルイの瞳が、怖かった。
思わず後ずさろうとすれば、反対の手が、私の背中に回っていて。
後ずさることができない私は、ルイにこれでもかってほど引き寄せられた。
「逃げるなっつったよね?」
「る、いく⋯」
「何逃げてんの?」
「⋯っ⋯」
「どうしてヒカルの匂いがするの?」
「⋯っ⋯」
「俺、会うなって言ったよね? なんでヒカルの匂いがするの?髪洗えば誤魔化せるとでも思った?」
「ちがっ⋯」
「違うなら、どうしてヒカルの匂いがすんのかなぁ?」
どうしてヒカルの匂いがするのか⋯。
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