第41話
「外、走ってる人がいて。見て、ルイくん。あの赤いジャージの人がすごく速いの」
私はそう言って、再び外の方へと目を向けた。
向けた。
向けたはずなのに、私の視界は黒かった。
「る、るいくん、何してるの?」
それはどうしてか、いつの間にか背後にいるルイが、片手で私の両目を塞いでいたから。
背後にいるのはルイだって、すごくいい匂いだから分かる。
何故隠されているか分からない私は、ルイへ振り向こうとするけど、もう片方の腕が私のお腹へと周り、身動きが出来なくて。
「何してるの、は、俺の台詞」
「え、?」
「何見てるの?」
「えっ⋯?」
「何見てるの?」
な、なにって、え?
え⋯。
何見てる?
え?
今?
「ルイくんの⋯⋯手、だよ?」
私の目の前にあるのは、ルイの手だから。
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