第32話 迷宮圏である
「おめぇら!よくこの五日間で免許皆伝まで習得できたな!オレェの弟子達でも中々いねぇ逸材達だぞ!」
そこまで褒めてくれて嬉しいんだけどさ……俺はダニスと違って、そこまでの逸材って訳でもねぇんだな、これが。
おミカ様とゼロちゃんの助言で登った訳ですしね。
誇れる代物という訳ではないのですよ。
ズルにズルを重ねているようなモンだし。
時間をかけて習得している先人達の方が余程立派だ。
俺も自力で習得できる才能があったら良かったんだけどな。
…こんな考え事をしても嫌な気持ちになるだけだな。やめよ。
「まぁ、免許皆伝とは言ったが、完全に皆伝って訳じゃぁねえ。おめぇらの目的が何だかは知らんが、阿修羅は完璧な状態じゃねぇ。使えるだけの状態だ。精進をしろ」
イエッサー!魔法と情熱の炎とスキル上げと阿修羅を頑張るでございます!
うん、やる事多いな。はぁー、夢での鍛錬補正もあるとは言え、普段よりも量を増やさなきゃだな。
努力は慣れてる。自分が新しく進む為の段階だから、むしろ心地よく思う。
でも、唯一怖いのは…きっと。
「ん?どうしたよ、ディニア。俺の顔、変なもんでも付いてるか?」
いいや、問題ねぇか。頼りになるダニスくんがいるからねぇ。
「べつにー」
「それ、まあまあ気になるんだが…」
言わなくても良い事だからな、言わない!
***
「お前の冒険者登録が済んだ事だ。次はどこに行く。最速でSを目指すんだ。オークや
そんな訳ナッシング。オークやツィアリプルなんかの単体狙ってちゃ、いつまで経っても昇進はできないからな。
一気に多数を狙うとしよう。俺とお前、両方が一斉にAへと上がるのに有効な手段があるだろう?
とーっても便利で、とーっても危険だから、誰も手を出さない依頼が。
Bランクのベテラン冒険者として長く活動してきたお前なら分かるだろ?
そう、迷宮圏の探索だよ。
迷宮圏は広く、数は多く、敵は強い。そんな危険マシマシな依頼を受けるのは少ない。というか、ほとんどいない。
だから、迷宮圏はランクの高い依頼としても知られている。
そして、書いてあるランクの一つ上ぐらいの難易度なので、クソトラップとも。
そんなリスクだらけの迷宮圏。でも、リターンはその倍以上にあるんだ。
大きな…
「はっ!そりゃぁ良い。アレをする前の準備運動にはなるか。教えてやろうぜ、マギリアルどもに」
「あぁ、俺達が来るとどうなるかをな」
そーんな流れで出発しまして、一つの目の迷宮圏は
常に空間に蔓延っている毒の菌が体を侵食し、魔力の操作も体を動かす事もできなくなるという危ない迷宮圏である。
その特性から、公に判明しているのは一階層のみ。上の連中はもっと下の情報を持っているだろうが、良くて三階層だ。
下に行けば行くほど毒の菌が強くなるんだ。
国宝級の
「ぬるい」
「完全同意」
そんな菌糸と禁忌の森ですが、俺とダニスは余裕で中層まで行っています。
いやね、普通に余裕だったよね。阿修羅を習得してから、常時神聖魔力が体に引っ付いてんのよ。
だから毒菌糸の侵食攻撃も効かない訳で。
菌糸と禁忌の森って状態異常攻撃?が主となってくるから、敵もあんまり強くねぇし。
うーん、他を選んだ方が良かったな。菌糸マギリアルも、状態異常がなけりゃ、地上のマギリアルと同等レベルだ。
これじゃぁ準備運動にもなりはしない。
そりゃぁランク上げる為には都合が良いかもしれんが…物足りん。
ハチャメチャ菌糸てんこ盛りフォームとかは出ないのか、某ライダーみたいに。
「でもなぁ、てんこ盛りって普通なんだよな。もっと捻った形態が欲しいよな。なぁ、ダニス」
「悪いな、ディニア。俺にはてんこ盛りが普通って感覚が湧いてこないんだ。というかてんこ盛りってなんだよ、某ライダーってなんだよ」
「お、ダニスはてんこ盛りフォーム派か。いやまー、俺もてんこ盛りフォームを否定している訳じゃないんだが、もう少し捻ったのをだな」
「人の話はちゃんと聞こうな?」
まあまあ、その話、今はいいじゃいですか。
てんこ盛りフォームで盛り上がっている時なんだから。
え?盛り上がってない?そっか…そっかぁ……。
ごほんごほん!そんな事は置いておきましょう。今は関係ない話でしょう?
話し出したのは俺?はぁ、君は小さな事一つ一つに突っかかるよね。
そんなんだと、女性にモテないよ?
好きな人にだけモテてれば良い?純愛だねぇ、素敵だねぇ。
もちろん俺もミカにだけモテていれば良いですけどね!?
なんの張り合いか?うーん、なんの張り合いだろうなぁ。
「まぁ、それは後にしようや。ダニスの望み通り、てんこ盛りフォームの登場だぜ?」
「いつ俺が望んだんだ。てんこ盛りってのに少しも興味を抱いた時はねぇんだが。そして強敵と戦いなんて思考もな」
嘘つけ。ダニス、お前の瞳、どうなっているか分かるか?キラキラと輝いてんぜ。
お前が戦いは好きじゃないのは知ってる。ただの生きる手段としか見ていないのも知っている。
てんこ盛りを期待していたのは嘘かもしれないが、強敵を期待していたのは本音だろう。
戦い自体に興味がねぇ俺だって、少しワクワクしてんだ。
誰にも迷惑がかからず、誰にも見られず、新しい力を試せるってんなら……男なら全員そうだぜ、ダニス。
「競争しようぜ、ダニス」
「ルールは?」
「何でもあり。だが、妨害はなし」
「乗った!!」
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