第28話 二日酔いである

「くっそ頭いてぇ」


「初めてなのに調子乗ってガンガン飲むからだ。少しは加減を覚えろ」


その通りなんだが、つまみを出してきたのはダニスであり、和香の次に色々な酒を出してきたのもダニスなんだよな。

諸悪の根源的なお前に言われると、なんかこー、な?


おいこら、目を逸らすな馬鹿野郎。なーに自分は関係ありませんみたいなポーズ取ってんだよ!

お前ゴリゴリ関係あるからな!


「まあ、そんな事を置いておいて。今から何をするんだ」


「昨日言った目標の為、準備をする。ミカやリオ達にはそれぞれの依頼を任せている。俺達はとりあえず、Sランクに上がれば良い」


「は?本気か、ディニア。Sはそう簡単になれるランクじゃないぞ」


「一ヶ月以内ね」


「聞いてねえや」


そりゃSランクは高みだ。一般人が辿り着ける領域じゃねえ。

人を辞めた人外にしか行けない領域。今の俺達が目指すには無茶が過ぎる。

だが、国を相手するにはSじゃないと話になれねぇんだよ。


お前、言ったもんな。俺の話に乗るって。

今更ナシっていう選択肢はねぇぜ?


「そうか、そうだよなぁ…。こいつはそういう人間だったな」


***


「「うわぁ」」


なんと言いますか、マギリアルの数が多いですね。

天の灰峠は危険な領域だという事も知っているし、質も数も高いのも知っていた。でもさぁ、これは違くない?

歩きの動作で地面にクレーター作るやつとか、空を埋めつうす集合体とか。

他の危険な区域と比べても、格段と高い。

なんで爺様はこんなところに住んでんだ。絶対人の住めるところじゃねえだろ。


「おい、ディニアぁ!お前、ここに本当にいるんだろうなぁ。伝説にして最強、天数手様がよぉ!」


「ミカの情報なんだから間違いねえよ」


集合体に追いかけられつつ、そんな会話を交わす。

天の灰峠に向かう途中で知った話だが、母方の爺様って、冒険者としても活躍していたらしい。

数十年経ってもその活躍は偉業と言われ、伝説の冒険者と呼ばれているみたいだ。


爺様の話をして、を見た少年のように瞳がキラキラしていたのは記憶に新しい。

成人男性でもあんなに目を輝かせる事ができるんだな。

10年(多分11年)生きた中で、初めて見たぞ。


ん?ロボットってなんだ?俺の知っている単語にロボットってあったかなぁ。


まぁ、いいか。今はこいつだ。


「ちょっと実験」


"太刀風砂嵐グランディーニ・デザート四の周風ドリーム・フォーカス"


小指と薬指を折り、中指と人差し指を向け、親指を上に立てる。その形を両手で作り、合わせる。

土と風の複合魔法。それが人差し指と中指の間に発生させ、螺旋させる。

土の粒々と透明な風。合わせるのにはまだ苦戦するけど、少しは慣れてきた。


まだまだ普通の魔法と比べたら魔力は食うが…全然使える範囲だ。

だから、こういう使い方もできる。


「散った、のか…?」


「だな。魔法をぶつけたら吹き飛んだ」


この地帯のマギリアルを見て思ったんだよ。肉体面でも魔力面でも優秀なマギリアル達が無視しているの、何か仕掛けがあるんじゃないかって。

予想通り、仕掛けがあったよ。魔力の残量が常に低いのは極度の物理攻撃低下を集合体全部にかけていたから。


物理系のマギリアルが多いからこその進化だな。生存する為に上手く進化している。

だが、魔法を扱う奴が外から来れば、無意味だよなぁ?


魔法が弱点と分かれば、後は対処は簡単だ。全身に魔法という魔法をぶち込めばいい。

くふふ、本職研究家の魔法使いを舐めんなよ。

研究畑の人間でも、多重の魔法なんかも扱えんだよ。

他人に頼まず、自分でも可能にするのが、研究者にとっての最適選択だからなぁ。


はっはっはっ!寝ている間に増えたスキル共も使って、過剰キルしてやるわ!


[デュアル・マジシャンⅢ]、[操作Ⅶ]、[マジック・トリプルⅠ]、[多重魔法展開Ⅰ]、[過剰魔力Ⅰ]、[効率化Ⅰ]を魔法にぶち込む。

さぁ、とくと喰らえ!スキル魔法マシマシアタックじゃぁ!


"超技魔合体スキル&マジック"


「いきなり撃つな、このバカタレ!いきなり目の前で魔法が多重展開された俺の気持ちを答えよ!」


「ドンマイ!」


うむ、うむむむ。大技を放ったつもりだったが、全然魔力が減っていない。

あのドラゴン戦で使用したトリプル複合の方が魔力を持ってかれる。

スキルの効率化のおかげか?魔力の消費も効率化されているみたいだ。


ナイス俺!寝ている間に素晴らしいものを習得してくれた!

ふふん、俺の魔法レベルは高みに登ってしまったな。

いやー!天の灰峠も意外に簡単じゃないですかヤダァ!


「グルル」


「コラ、コキ、コラ」


「ウォォォオオン!」


すぅー、囲まれましたね。とーっても強いマギリアルに囲まれてしまいました。

あぁ!こんなところで多重展開魔法なんか使うもんじゃねえよ!誰だよ使ったの!


「どうしよっか、ダニス」


「どうしようかって……これを乗り切るしか答えはないと思うが?それ以外に何かあるんですかねぇ。元凶さん」


「ごめんて」


しっかし、乗り切るにしてもだ。

この量、この質。流石にまずいぞ。あの時のドラゴンよりも危険度は高い。

ダニスがいるとは言え、流石にこれは…。

もしかしたら死ぬかもな。


くぅー!失敗した!不用意に放つべき代物じゃなかったな。


「おい、おめぇら。弱い者イジメは無しじゃねえかよ。弱肉強食?はっ。それは熱くねえだろ。男なら、熱くいかねぇと」


"多魂数手たこんすうしゅ熱燗手王阿修羅"


お久しぶりだな、厳つい俺の爺様。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る