第26話 竜である

「ふっ、はっ、ほっ」


どうも、徐々に追い込まれてきた隊の俺氏でございますわよ。

さぁてと……本格的に不味くなってたな。このドラゴン、俺の魔力の影響が効かなくなってきてる。

魔力耐性が強い種族だとは知っていたが、ここまでとは。

最初でボロボロだったのは経験不足からか。やだねぇ、経験も手札も即座に対応してくる野郎は。


"神の嘆きレジェンド・クーター"


"不認知の終末論アンノウン・ディストピア"


この戦闘、何がキツいつて体力を削る魔法を連発しなきゃならないとこだ。

人間の中で伝わっている既存の魔法を何百発撃っても無駄になる。

それは防御でも、攻撃で。どっちの面からも、大量を削る魔法を撃たなきゃ魔力の無駄になるのがキツい。


っと、今の打撃は危なかった。嵐の魔法がうまく練り込まれ、まともに受けたら魔法と物理で二重に受けていた。

今の俺の体力じゃぁ致命傷になっちまう


「ガゥルアぁぁ!」


竜としての能力か。身にまとっている鱗を肉体と分離させ、分身として動かせるようにしたか。

勘弁してくれよ。一体だけでも精一杯なのに、複数体は辛すぎるぜ。

まあ、そんな弱音を吐いている暇はないんだが。分身をさっさと片付けないと、こっちが不利になる。

一斉のブレス攻撃を放たれゃ、打つ手なしになるからな。


…最近、俺は物量戦ばかり経験している気がする。


"千枚神楽レッツェル・グランド"


俺の使える魔法の属性は三つ。火、風、土だ。ミカと協力をすれば、擬似的に聖属性の魔法も扱える事になるが……今は気にしなくても良いだろう。

その三つの中の一つでダメージを与える事はできない。

だから風と火の複合魔法を用いた訳だ。


しかし、今のドラゴンはそれにも対応しようとしてきている。

だから、これは更なる複合魔法。そう、火と風と土によるトリプル複合魔法だ。

これなら、まだ対応しきれねぇはずだ。


「ハァ…ハァ…」


しかし、それは俺も同じ事。トリプルの複合はした事がないってのもあるが、一番は相性だ。

火は水に強く、水は風に強く、風は土に強く、土は火に強い。

この三つだけでも二つの相性がある。

そして、それを相性のある複合に慣れていない俺がやっている。


もちろん、俺にもダメージが与えられる。

超高火力を発生させる為、今の俺には三つの条件が設けられる。

三つの属性がある中で存在する二つの相性を均等にしなければならない。

慣れていないトリプル複合に膨大な魔力を注ぎ込まなければいけない。

魔力と肉体を繋ぎ合わせなければならない。


この三つを心がけながら戦闘をする。

はっきり言って、最悪の戦闘条件だ。


「だから、早めに終わらせねえとな」


俺の勝利条件はドラゴンが適当するよりも先に叩き潰す事。適応されては、俺の勝機は確実になくなってしまう。

中々にハードじゃねえの。最近は命懸けの戦いが多すぎて嫌になっちまうよ。


今から扱う魔法だって、体力を削る魔法に三元素を重ねている。

もはや命を削る魔法と言っても良いんじゃないか?

でも、まぁ……そんぐらいしなきゃ話にならねえよな。


最強の憧れも、ミカとの結婚も。進ませるには力を示すしかない。有能性を示すしかないんだ。

凡人の、突出した才能のない俺には何の対価もなしにはできない。

理想へと至るには代償が必要だって言うしな。


"反乱の天地オーバー・リツェレジ"


[土魔法]と[風魔法]を使用した複合広範囲魔法。

鋭利な風は土魔法によって鋭さを増している。まだ土魔法に対応できていないドラゴンさんにはダメージを与えれるはずだ。


やっぱり分身体は体力が低いな。砂嵐に当たった瞬間に消え去ってくれる。

見えやすくて助かるよ。定期的にスリップダメージを受けてくれてるから、俺の瞳にはバッチリ染み付いてる。


「逃げるのは良くないぜ?もう少し張り合おうや」


"土身風式・碁の段つちみかぜしき・ごのだん"


まだ[土魔法]と[風魔法]は通用するからな。欲張らせてもらうぜ。

[土魔法]で土台を作ってから、[風魔法]を付与させる。加えて、[風魔法]の上から[土魔法]を付与させる。

これを技として呼ぶのなら、三重層か?


いや、今は別にいいな。技名考えたところで、負けたら全てが塵になる。

今はただ、こいつを倒す事だけを考えればいい。


「片目、もらった!」


ドラゴンが砂嵐と共に俺を吹き飛ばそうと、[嵐魔法]を発動しようとした。だから、[風魔法]で[嵐魔法]に透明化させ、ドラゴンに近づいた。

[嵐魔法]の純度が高くて助かったよ。一歩届かない[風魔法]でも、透明化させて届かす事できた。


ドラゴンは鱗が硬い…いや、全てが硬い。外面を守る為、内面を守る為。自身を守る為に究極の進化を遂げたから。

しかし、こいつは違う。魔法を扱う為に取り出している魔力の根源は眼球だ。

魔力器官が外に出ていたらどうなる?


「そりゃ、柔らかいよなあ」


「ガゥルァァ!?」


「随分な暴れ具合だな。片目を潰されるのはそんなに痛いか?そうかそうか、そんなに痛いのか。なら、まともに魔力が練れないだろ」


頭部に存在している二つの角を掴めば、ドラゴンに動揺が走る。

嫌な予感でもしたんだろうな。[嵐魔法]を展開している。身体中に嵐による傷が刻み込まれる。

でも、耐えられないモノじゃない。


予想通り、魔力の質が落ちている。これなら、全力の魔法をぶち込めば何とかなる…!


もう後の事なんて気にしてられない。気にしてたら、俺が死ぬ!


「フル、パワーだぁぁ!!」


"三律海星・禁の故トリックスター"


土、風、火。俺の使える属性全てがドラゴンと俺の周りに展開され、回転していく。

徐々に魔力は強まり、天空へと届く塔の魔法として変化した。


「強すぎだぜ、お前…」

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