第24話 旅人である
「んで、俺達は二国を潰さなければいけない訳だけど。これがあれば潰せる。そんなアテはあるのか?どんなにラングリニス王国と国力が離れていても、国には変わりない。今の俺に潰せる相手じゃないと思うんだが。何か別の、どんな代物でも捻り潰せるアテとか」
「あると言えばありますし、ないと言えばありません」
「なにその曖昧発言。ありなしハッキリさせようぜ」
どうも、質問をしたら曖昧で返ってきた俺氏でございますわよ。
なんかね、もっとあると思うんですよ。もっと適した言い方とかね。
わざわざ分かりにくい言い方とかしなくても良いと思うんだ。
不器用なノワール家に染まらないで欲しかったんだけどなあ……。
「ディニア様の努力次第です。ディニア様の
だからさぁ、それを先に言いなさいよ。あと、普通に長いし分かりにくい。
ミカっちゃん、君は語彙力があるんだから、それを上手く活用しなさい。
というか、なんで俺は先生みたいな言葉を思っているのでしょうかねぇ。
げふんげふん。話が思いっきし逸れてしまったな。元の話は母方の爺様に会うってモノだったよな。
あっちの爺様、苦手なんだよ。体がゴリゴリしてて、顔面は厳つい眼光を構えてる。まるで裏の人みたいだ。
俺に対する視線は柔らかいんだけど、力加減が下手で痛かったのがね……どうしてもトラウマにね。
そういえば、だ。なんでミカは厳つい爺様をアテにしているんだ。
あの人、スローライフをしたいから、とかで誰にも言わず未開の地に行ったはずだろ。
孫の俺にも言わず。ゆっくりとした生活を一人で楽しみたいからって。
親父が「随分な秘境」と言うぐらいには人が関わってこない土地らしいし、余計に。
「あの人、伝えていないのですか……」
「伝えていないって、なにが?」
「スローライフは1週間も経たないウチに飽きたという話です」
飽きちゃったんだ、スローライフ。
いやまあ、妥当だとは思うよ。だって幼少期の時から戦いに浸っていた人が今更ゆっくり隠居なんてできる訳がないんだよ。
体には闘争が染み付いちゃってるでしょ。
「あの爺様の場所は?」
「天の灰峠です」
はー、くそくそ。あっこの海より危険度バカ高の化け物領域やんけ。
そりゃある程度危険な場所だとは覚悟していたが……思ってたよりも何百倍危険なモンじゃん。冷や汗タラタラなんだけど。
即行けると思ってたんだがな。天の灰峠なら準備をしてじゃないとまずそうだ。
ラングリニス王国に戻るの、相当な時間がかかりそうだ。
ミカがいるから頑張れるけど。
***
「これで食料は全てですね」
廃村には食料がなかったので、近くの街に行って食料の買い出しに来ています。
帝都との取引はあるみたいだけど、少しだけだ。適正価格を余裕で超えていらっしゃる。
ミカが共通硬貨を多く持ってこなければ、買えない金額だった。
その点からも、さっさと戦争を終わらせないとだな。
まあ、終わらせて終わりじゃないんだが。戦争終結した後の尻拭いで何年もかかってしまいそうだ。
親父からの指示は潰せだ。けど、潰して見て見ぬふりはできない。
人の上に立つ者として。
「はあ」
「どうしましたか?」
「なんでもないよ。未来の事が
ミカに説明をしながら、魔力と殺気を解放する。建物に隠れた気になっている矮小な鼠どもに向かって。
視線や感情の起伏から見て、狙いは食料か。
食べ物がないのは大変だろうが、こっちも食べ物がないと困るんだよ。
特にミカがね。
さぁて、出てきな。逃げるなら良し、立ち向かうなら……ねぇ。
「焦光!」
魔法名の詠唱は決して悪い事ではない。魔法威力の底上げ、魔法本体の速度の増加。自分の手札が明かされる危険性も共存しているが、同格ならそのリスク込みでもアドバンテージと認識できるもの。
でもよ、相手は俺なんだよ。親父達上位層と比べれば何段階も劣るが、これでも肉体面は一般の騎士と同格。魔法は研究者の立ち位置にいる。
同じ土俵だと思うの、間違いなんだよ。
"
詠唱してからの魔法構築。加えて、構築速度も遅いから急がなくても入れた。
魔法展開中は隙だらけであり、魔法解術を受けたら硬直が増える。
ちょっと遅めに走りの構えを取っても、余裕が取れるんだよな。
「かっ……!?」
「安心しろ、殺しはしない。ただ悶絶で動けないようにするだけだ」
…なるほど、メンバーは寄せ集めという訳ではなさそうだ。
この腹パンくんがやられて、視線の鋭さが増した。同じ街で育った幼馴染とか…そこいら辺りか。
でもさあ、視線を鋭くするだけではダメだろう。
友達の敵討をしたいなら、向かってこいよ。
魔法使いは空間に魔法を貼らなくちゃだろ。感情に浸ったままで行動をしないのは、特大のナンセンスだぜ?
「なっ!?」
「貴様ぁ!」
「そうカッカすんなよ。俺の行動次第でこいつの首を簡単に折れるんだ。行動と発言には気をつけるといい」
まあ、無理だろうが。ここまで怒りを抱えていると、感情を抑える技術を持っていないと不可能だ。
ほぉら、魔法と拳が飛んできた。
「バァカ」
"
"
「実力差、把握しようね。お雑魚ちゃん」
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