第23話 戦争である

どうもどうも。イカとタコをミカと共に倒し、服をもらってから、海を足場にして飛び回っている俺氏である。

ミカが服を持ってきてくれて助かったぜ。じゃないと、俺はフルチンの変態野郎って事になってしまう。

ミカともマトモに会話ができないからね。


「そういえばだけど、確かこの海って戦争地域だったよな。なんで戦争してるんだ?」


「……グレイターと呼ばれる組織が現れたのです。ディニア様が魔人と呼ばれ始めた一年半前から。数は極小であり、強さは平均より少し上。ですが、ここ最近強さも数も増してきたのです」


「なるほど、防衛の強化か。それで?ラングリニス王国に関しては?」


「突然現れた者達に負ける程、ラングリニス王国の者達は弱くありませんよ。ディニア様のお父様も参加していますし」


知ってた!あれだもんね。ウチの国、親父とニケと総帥様がいるから負けなしだもんね。

そりゃ一国だけ余裕綽々な訳ですわ。


だとしたら、課題は……無事にラングリニス王国へと帰る事か。

重大な課題じゃないですかヤダー!


「ぁ、言い忘れていた事がおりました。ディニア様のお父様とニケ様から伝言を授かっております。二国ともロクなのじゃないから制圧をしてから帰ってきてくれ、だそうです」


あのっさぁ、目覚めたばかりの子供にかける言葉がそれですか。親父殿。

俺ができると信じているから?やかましいわ、ボケナス。

できようと、できまいと、実の子供に頼まないようじゃねえんだわ。


でもなぁ、親父だからなあ。あの人に頼む内容でできないは許さない親父だからなあ。

無理ですって言って帰ったら怒られそうな気がする。

親父の怒りって怖いんだよ。たまにしか飛ばない分、補正かかってんのかってぐらい。


……二国のどちらかに着いた時に考えますかね。


***


「廃村だな」


「ですね」


さてさて、52件目の廃村という訳ですけれども。

ハイウェル帝国様は随分と国民に対して不親切だねぇ。

魔法兵器の投擲が原因で村がボロボロになったんだろうけど、死んでいる人が多数ってのが。


戦争に活躍する軍人以外はいらないってか?

一桁代だったら俺もそうするが、流石にここまでの数は。


「帝都以外は比較的蔑視しているようです」


「だろうな。見ればわかるよ。本当、むごい事をする」


国は戦争に勝つために国民を利用するが、それは未来のためだ。

未来にて、国民が笑顔で暮らせるようにする為だ。断じて、国民を切り捨てる免罪符ではない。


そりゃ人の上に立ち、人を管理するのは大変だろうが、どうでも良い駒として処理をするには違うだろ。

上に立つ家に生まれたのだから、その責任は最後まで抱えるべきだ。


「ディニア様?」


「いや、何でもない。ちょっと反吐を吐いてただけだ。……そう言えばなんだが、ミカって飯必要だよな。何か持ってきてはいるのか?」


「持ってきてはいます。ですが、数は限られていますので、できる限り探してみたいです。ディニア様のお腹はどうですか?」


お腹、ねぇ。魔水から出てきた時からそうなんだけど、全く空いていないんだよな。

倒れる前だったら、あんだけ魔力消費してたら腹が空くと思うんだが。

やっぱり、研究されてから俺の体おかしくなってるよな。


目覚めたばかりで感覚が誤認しているという説もない訳ではないが……可能性は極めて低い。

何故かは知らんが、魔力器官の付近にのみ発生する魔力細胞が栄養を生み出していると実感ができるから。


うーむ、よくよく考えれば、人間から逸脱してるな。

現在に活動している細胞の内容なんて、人間に理解できる内容ではない。そんなもの、マギリアルにしか。

その点から考えるとね、本当に闇深くなっちゃったね。


「大丈夫です。私はどんなディニア様であろうと、一緒にいます。突き放されようと、側にいます。私の居場所はディニア様の隣一つです。ですから…」


「分かった。ありがとう」


この子はどれだけ良い子なのだろうか。

俺が感じていた不安要素を汲み取り、自分はどこまでも着いてくと言って、不安を刈り取ろうとする。どこまでも行けるって勇気を与えてくれる。


そんな強かで、優しい子だから。俺は惚れたんだ。


だから、俺は大好きなんだ。


「永遠に支えてくれよ?ミカ」


「ふふっ。誰にものを言っているんですか。私は支えますよ。支えない時は、ディニア様に捨てられた時ですね」


ほんと、この人は。捨てないって何百回言っていると思ってるんだ。

一時の迷いで捨ててみろよ。メンタル面で俺が死にかけて、ミカに戻るのねだるぞ。


「ねだる、ですか」


「そう。ねだるねだる。だからお前は捨てんぞ。情けない姿は見せたくないからな」


「私は少しみてみたいです」


「やめてね?」


冗談抜きの本当に。俺、ミカにだけは情けない姿を見せたくないんだ。

好きな人に格好つけたいっていう精神が男にゃあ、あるんです。

だからね、情けない姿を見ようとするの、やめません?

男にとって致命傷が避けられないぐらい大きな一撃なんですよ。


「分かりました。善処します」


そんな笑みで言われても説得力ないっすよ。

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