第20話 マギリアルである

「っだぁ!いつまで続くんだ、この魔法光線!さっきから連続で発動しまくってヨォ!魔力枯渇っていう概念はないんですか。ないんでしょうね!君たち機械だから!分からせれるなら分からせてやりたいよコンチクショウ!」


どうも、機械連中クソ人形の無尽蔵具合に泣き言を言いたい俺氏でございますわよ。

いやさぁ、マジでコイツらの魔力どうなってんだよ。

魔石がエネルギー源だとして、何故こんなにも膨大なんだ。

確かに世の中にゃあ長持ちする魔石はある。


けど、流石にこんな機体で耐えられるか?

どんなに技術力が高くても、それを受け入れる器の性能が良くなきゃ、そこで終わりだ。

ぶっ壊れて、元も子もなくなって。それで。

くっそ、いくら考えても分んねぇ!


研究畑の人間だろうとなぁ!考える時間をくれなきゃどうにもできないんだよ!


「あぁもう!次から次へとやってきやがってよ!」


何じゃ、このクソ厄介集団。

ぶっちゃけ、そこいらのマギリアルの方が幾分か優しいぞ。

一体倒した側から増援を呼びやがってよ。

ゴブリンみたいな特性をしやがって。

まあまあの強さを持った奴等が徒党を組むってさ、良くないと思うんだ。


"ノワール流無手聖剣、雨時々あめのときとき"


よーし、これでクソ人形もちょっと減ってくれると……思ったんだけどなぁ。

まあそうですよねと。そりゃあ増えますよねと。


本当にさぁ、何なのこいつら。

俺を逃さない為の設備なんだろうけど、難易度が鬼すぎませんかねぇ。

無尽蔵に増えまくる機械さん達をどうしろと。


「ディニア、天井、魔法光線、発射」


んだぁ!さっきから真ん中のクソ人形うるせぇなぁ!

あいつの言葉からしかクソ人形は動かないから対応しやすいけど、そろそろうざったいぞ。

ん?それでしか動かない?

それってリーダー格の真ん中潰したら動かなくなるって事では?


はは、ははは。

なんでそれぐらいの事に俺気づかねえの?

アホなの?バカなの?死ぬの?


「まぁ、まあまあまあ。それは一旦ゴミ捨て山にでも捨てておきまして。今はリーダー格を潰す作業に取り掛からないとね」


という事で、空間に魔力の層を作り上げ、思いっきり蹴る。

スーパースピードで進みつつ、今の敵対している者達の能力を冷静に整理しよう。

あのクソ人形どもが主に使う技は「魔法光線」「増援」「アームの伸び縮み」「タックル」「自身の部品を使用した武器」。


一つ一つは大した事ないが、複数体存在しているが故、大量にぶっ放されるから対処は大変。

その状況で全ての対処をするなんてまともじゃない。

だとしたら、俺のするべき選択は一つだよな。

殺さずに拘束、もしくは戦闘不能状態へと持ち込む。


俺の今使える魔法は風と火と土。

俺の持っている[火魔法]は大体火力が高いし、[土魔法]は広範囲や殺傷技が多い。

戦闘不能にしながらも生かしつつ、リーダー格を潰す。

それに最適ってのは……やっぱり風だろ。

俺の[風魔法]のレベルはⅠだから低い魔力で大きな風は起こさない。


だから大きな魔力を注ぎ込み、今までの経験で操作を補う!


"疾風陣風風車ザ・ランドリー"


勢いよく進んだ俺の体は地面に付く。その瞬間、手も同じように。

軽めに触れれば、地面には四葉のクローバーが刻まれていた。

くふふ、大成功だぜ。


「お前だろ、リーダーは。最初は見えてたけど、俺が倒し始めてから隠れたから見つけにくかったぞ」


「……ギ!」


「んな話通じないふりして、逃げなくても良いんだぜ?」


でも、確信できた。

命令で生きるクソ人形どもと違い、生き残る為に走り回る。

その状況に至る可能性は二つある。

それは直接的な命令を受けたのがこいつ一体だから。もう一つはこいつがリーダー格だから。


さっきからクソ人形は言葉を基点としている。

つまり、リーダーを潰せば動けない愚図ってこった。


「リーダー兵器、パース、撃退モード、点火」


打撃を鉄塊で打ち消されたか。

リーダーだからある程度の強さを持っていると思っていたが、予想以上だ。

確実に人形の範疇を逸脱している。

反応速度だけじゃない。下の奴等にはない吸引能力。

その力、その数々。明らかに別格だ。


でもさぁ、だからって……引く選択肢なんて俺に無いんだわ。

今の俺がどういう状況しか知らないけど、待ってくれる人はいる。

あいつは、ミカは、ずっと待ってくれるって。約束をしてくれたから。


「だから、死に体でも歩くさ。お前を突破して」


「マギリアル、害、世界、死すべき」


その返答と共に返ってくるのは小さな魔弾。

速度は速い。軌道は変則的。

やりにくいったらありゃしない。

でも、宣言しちゃったしねぇ。絶対帰るって。

俺、約束を破れるほど汚い魔法使いではないのですよ。


「速くても、それより速く叩き込まれたら意味ないって。作られた人に学ばなかったの?」


「……学んだ」


鈍い重低音が鳴り響いたその瞬間、俺の腹部には百をも超える魔弾が叩き込まれていた。

なるほど、拳を打たせるような隙を晒したのはわざとか…!

俺が想定した以上の頭脳を持っているじゃないの。


ちょーっとやばい状況から抜け出そうとするも、体が痛いの何の。

魔弾をぶち込まれて、戦闘経験もあまりない野郎が体を動かせる訳がない。

何百と増えたアームでぶった叩かれる。


くそ、いてぇ…!

目覚めたばかりの人をぼかすかと殴りやがって。

こっちはサンドバッグじゃねえっての。


痛いだ何だ言ってる場合じゃない。

さっさと倒さなくちゃ。元気を振り絞れ、俺!


"ノワール流無手聖剣、悠々ゆうゆう"


「これで、どうだ!」

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