第17話 重傷である

はい、どうも。

脇腹に刺されたあげく、自爆技も使用した影響で体がボロボロでございます。

そんな技を使用したのに、逃げられましたと。

いやさぁ、マジで恥なんだけど。

決死の攻撃を当たり前のごとく避けられて……ミカに合わせる顔がほんま無い。

まあ、命乞いよりかはマシだけど。


「いちち」


「無茶しすぎよ。自爆技を使用して、そこまで原型を保っているの、奇跡よ」


「知ってる」


俺の体が頑丈なのは俺自身がよく知っている。

でも、もう少し酷い事になると想定していた。

急いでいて、魔力でガードをする暇なんて無かったし、マジで奇跡なんだよな。


「私が医療魔道具持ってて良かったよ!持ってないと死んでたかもだよ!」


「あぁ、分かってる。感謝してるよ」


「うんうん、噛み締めると良いよ。本当に死んでたらミカちゃんが悲しんでたよ!」


本当そうだよ。

俺が自爆技で死んでたらミカは悔やむ。

約束を破った俺に対して怒るんじゃなくて、危険だと認識して尚見送った自身を怨む。

ミカは優しい人間だ。人の為に怒れる人間だ。

その為には、自分すらも利用する人間だ。


だから、死ななくて正解だった。

死して現世を見れるかは分からないが、とてつもなく悲劇に落ちるのは想像に難くない。


それ考えると……死ななくて良かったな。


「ちなみだけど、ミカちゃんにはもう連絡をしてるからね?流石に無視できなかったよ。自分の好きな人が自分のいない場で無茶をした挙句、何にも言ってくれないなんて、アタイにはね」


くっそ、威圧感のある鋭い目付きに当たり前すぎる言葉。

なんも反論出来ねぇ!


ひぇー、ノワール家に帰るの憂鬱になっちゃう。

ペチペチの打撃混ぜながら説教されるんだ。

俺は何回か説教をされてるから詳しいんだ。


まぁ、でも……今回は嬉しいかな。

説教してくれるって事は、その人を見てくれている証。

命乞いをしようとした、こんな情けない俺でも…ミカはきっと飲み込んでくれる。

飲み込んで、受け入れて、説教してくれる。

くふふ、そういう所、好きだなぁ。


「とりあえず!皆が生存できて良かった!王都についたら酒でも飲もう」


「良いですね!」


「良いんじゃないの」


「戦地を共にした中、それを酒で更に深める…ナイスよリーダー」


あぁ、本当に……最高だな。このパーティーは!


***


「さて、リーダー。どうしてこうなったか言えるかね」


「おう。大半お前のせいだよな、グリ。いや、ノワール家長子のディニア様よぉ」


そう、これは俺のせい。

王城の前までで終わるはずだったのだが、ズブズブの騎士野郎が全部功績を横取りしようとしまして。

いやね?俺一人だったら「まぁいいか」で終わらせるんだけどね?


流石に仲間と協力して、死線を超えてきたのに全部総取りはさぁ……ムカつくんだよ。

だから正体を晒して、嘘だと告発した。

ノワール家ってのは下手な公爵家よりも影響力がある。

つまり、ただの子供の俺でも、騎士よりかは発言力があるって訳。

都合よく行ったのは王女様の言葉もあるだろう。


何故かは知らんが、味方をしてくれた。

強者を好み、強者を愛す王女様だから信用度も高いぞ。


「でも、あのままじゃお金払われない可能性あったかるね!」


「使えないとか、適当な理由つけてね」


「それは充分ありえるわね。あのクソ騎士どもの事だから」


「むふー」


「ドヤ顔をするな、このバカ灰」


怒られちゃった。

でも後悔はしていない。

仲間の功績も、俺の功績も。全てを取られるんだったら、目立つ方が百倍マシだ。


前まではこんな性格じゃなかったんだけどな。

この仲間や大切な人を先に考えちゃうの、ミカ達に染められたんだよなぁ。

……まぁ、ちょっと前に自分の事しか考えなかったのがある訳ですけれども。


「そういえば、俺お前に言いたい事があるんだよ。お前、嘘ついたな?俺は信じたのに」


「ふっふっふ…てへ!」


「はっはっは。去ね」


痛い。反論がどうしようもないから思いっきりおちゃらけたら殴られた。

わいぴー、かなぴー。


でもさぁ、真面目な話すると、子供だって言ってたら連れて行ってくれなかったでしょ。

子供が死んだ責任は誰も取りたくないし、その正体が貴族の子供ってんなら尚更。

俺がいなかったらあの爺さんを止まらなかったし、正しい嘘だと思うけど?


「それは…そうだがな」


「まあまあ。ウィンウィンって事でよくない?もう終わった事で論争って、つまんないよー」


「そうか、ルカが言うのなら」


助かったー。

あのままじゃ延々と論争が続いていただろうからな。

ダニス相手と言えども、俺の語彙力じゃ負ける気しかせん。

止めたのがルカって事で…なんか恋バナを提供されそうな気がするが。


「て事でさ。恋バナ話して!ディニア様の事だから、全ては話してないんでしょう?ほらほら。さっさとだしなよ。ジャンプしたら出てくるでしょ?」


小銭かよ、と思いつつ。

俺が渋々話し出そうとしたその時だった。

国家名誉騎士とか名乗ってきた騎士様が俺を呼びにきたのだ。


いやー、救世主だね。うんうん。

ルカに思いっきし舌打ちされてるのは本当に笑えるけど。




閑話


・出会った時の第一印象はどうでしたか


ダニスの場合

「グリと出会った時、ガキだと思った。本当にガキだったんだが」



ルカの場合

「高貴の者で、実力があるんだなって。短剣と片手剣に魔力護符を付けてないから」



ユイラの場合

「すっごい魔力をすっごい練度で隠してたから、相当な実力を持った魔法使いなんだなって!」



リオの場合

「歩き方が常人のそれじゃなかった。だから、相当な武人だと思ったわ。事実は魔法使いだったという訳だけど。手加減ありと言えども、前教皇と戦えるのは魔法使いと言えるかどうか、迷ってしまうわね」



グリの場合(クソ変態野郎)

「えっちだと思った。あのパーティー全員」


「「「は?」」」


「えっちってなーにー?」

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