第15話 襲撃である
昨夜に聞かれまくり、ミカとの通話でおもいっしき徹夜をした俺氏でございますわよ。
魔力で疲れを補完しているとは言え、だいぶ疲れたなあ。
ごめんなさい、嘘です。魔法の論文で徹夜しまくってた時期あるから全然辛くありません。
「悪いな。ユイラ、グリ。お前ら二人に警戒を任せてしまって」
「全然いいよ!私とグリくんは魔力が膨大だし、使い方も上手いから、問題ない範囲だしね!」
「それにだ。気づかれずに魔力探知をするのは俺達二人でしかできないだろう」
本当いい人のパーティだわ。
一時期冒険者をやっていた親父が言うには、冒険者の中には利用するだけ利用するクズもいるらしい。
そんなパーティと当たらなくて良かった。
いや、ニケに回ってからの依頼だから、妥当なのか?
何にしろ、変わらない事実はある。
このパーティが最高だという……!?
この気配、神聖を纏っている。聖属性の使い手か。
「ユイラ!」
「うん!分かってるよ!」
「「ジャンケンの選択肢なんて与えない。一手から潰す!」」
"
俺とユイラの魔力が等しい分量、等しいタイミングで合わさり続ける事で発動する高等魔法。
出会ったばかりの二人がタイミングよく行動できる程、俺は意思疎通能力が高くない。
だから、これは時間稼ぎ。パーティの仲間が、騎士達が動けるようになる為の。
…当初はギリギリ間に合うかどうかだったが、今は相当魔力の波長が噛み合っている。
恋バナが仲を近くさせるとはな。初めて恋バナに感謝したぜ。
「聞け!騎士達よ!神聖国家の暗部を確認した。直ちに戦闘態勢に切り替えよ!」
「騎士達、動かないわね。ハッタリとでも思っているのかしら」
だろうな。王国の騎士達の腐敗は酷い。
最近、父方と母方の爺様と婆様、親父と国王様が結託して何とかしようとするぐらいだ。
とは言っても、全てじゃない。今回でも、戦闘態勢を整えてる奴はいる。
それだけで十分だ。
「リーダー。条件の確認だ。最優先は王女の安全。その為には誰が死のうと気にするな。動かないボンクラ騎士なんて、特にな。依頼の達成のみを意識するんだ」
「舐めるなよ。その程度の冒険者の心得、すでに心にある」
「確認だ。あと、それすらも心に入れてないバカもいるのでな」
俺とユイラは視線を合わせる。
これは合図。二人で作り上げたフィールドを崩すモノの。
態勢はオーケー。すぐにでも走れるだろう。
騎士が相手もされないという可能性は少ないだろうが、あるにはある。
魔法を懐に所持し、いつでも発動可能にする。
これで準備は完璧だな。
それでは、スタートと行こうか。
"
魔力でできた結界が崩れ、破片が落ちる。
その落ちる姿は美しく、蝶を連想させる。
させるんだけどさぁ!今はそれに目を奪われてる場合じゃないのよね。
さっき魔法を用意する過程で背中に魔力の塊を設置しておいて良かったぜ。
スーパースピードで走って行ける!
「こそこそ動いても、無駄なんだよ。お前達に王女は触れさせねえ」
"
地面から直径5センチの土を数百個取り出し、数多の腕に変化をさせて殴る。
圧倒的物量と圧倒的火力。魔力で全身強化をしていない奴らに対応される程、この技は簡単じゃない。
「お前達!屍を走れ!屍を超えてゆくのだ」
「いや、超えられない。お前達は屍の上で死するのだ」
聖属性の魔法で防御網を作ろうと、無駄だ。
俺は聖属性達性を持っている。それは攻撃に転じれば、聖魔法の防御網をいとも容易く破るもの。
お前達が超える方法は速度で超えるか、力で俺を吹き飛ばすかだ。
そんな切り札、そう簡単に切れるもんか?
「だったら、お前以上の速さで超えればいいだろ!」
「それを俺がさせるとでも…!?」
「いや、儂がさせる」
ははは、出せたみたいですね。
すごい速さで駆け抜ける奴に向けた地面拘束魔法を千切っただけじゃない。
念の為として展開していたオート魔力防御を当たり前のように破りやがった。
あの老人に速い若人。情報に載っていなかったぞ。
神聖国家本気の投入ってか?
はー……本気でやらなけりゃ俺が死ぬな。
戦闘なんて、好きじゃないんだがな。格上との殺し合いなんて、もっと。
小遣いで買った短剣と片手剣を早々に使用するとは思わなかったな。
もう少し日にちが経ってから使用するに値する敵が出てくると思っていたが。
王女様をどうしても手に入れたいらしい。
でもねぇ、こっちだって譲れないのよ。
だから……ガチのガチ、ガチンコ勝負と行こうじゃねえかよ!
「ジジイ、覚悟して受けろよ。俺の技は、少しやべぇぞ」
"ノワール流魔法双剣術、
ちょっとのズルで習得をした風魔法を短剣と片手剣に纏わせ、技として発する。
オート魔力防御を攻撃側に転じさせ、スーパースピードによる抜刀。及び空中を舞う斬撃。
平凡がこれまで歩んできた努力と経験が乗った技。
並なんかじゃ対応できない技だ。
けど、並じゃなきゃ、意外と簡単な技なんだよな、これが。
今だってそう。短剣と片手剣による合計六連撃を余裕で対処された。
あの杖、どれだけ殺傷能力が高いんだか。
「なるほどのぅ。貴様、ノワールか。因果は巡っている、とはよく言ったものや」
「…何が言いたい」
「貴様の曾爺によく似ている。それだけの話よ。凡才も、努力も。似すぎてわろうてくるわ」
俺の曾祖父さん?会った事ないけど、そんなに似てんのか、俺は。
って!敵の言葉に惑わされてる暇はないんだっての!
後ろを信用していない訳じゃないが、あのクソ速い野郎が突破しないとは限らない。
コイツを倒して、さっさと向かう!
「儂を倒す、か。その心意気よし。しかし、それで何とかできる程、儂は衰えておらんぞ?」
あぁ、知ってるさ。心意気で何とかできてたら、才能とかないんだわ。
それでもだ。大好きな人の為。俺はお前を倒す。
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