第5話 説明回である/それぞれの思考である

「ねぇ、ミカ」


「何でしょうか」


「俺さ、そろそろ火の魔法を覚えたいんだ。でも、魔法には明確生は必須。でだ、火の魔法の明確性ってどこよ?」


「知りませんよ」


***


期待の星であったミカに断られ、心が折れかけの俺氏である。

いやさー、ひどない?俺は魔法の事が大大大好きって知っているでしょうに。

その上で断るってどんな神経をしているんですか!


解き明かしたい、学びたい。その心故に、諦めるという選択肢が無いというのに!


「ディニア様、あなたは博識で研究畑の人間ですが、肝心なモノを分かっておりません」


「分かってない?」


「はい、分かっておりません。魔法というモノは歴史であり、軌跡であり、魂によって形成されています」


あ、それは何となく分かる。

魔法と魔力の関係性って根源とそれを用いる術。

だけど、それだけと言い切るには関係が深すぎる。

どんなに完璧な術、膨大な魔力だったとしても、経験なくては扱えない。


だから手数が豊富な魔法使いは経験も豊富だと言われてんだよね。


……魂どこ?


「知りませんよね。当たり前です。魔法使いは経験で片付けていますけど、本質はそうではありません。魂という情報の塊を術式の形で読み取り、歴史として形成し、世界を欺いているのです」


あー、はいはい。全くもって分からないという事実が分かりました。

いや、マジで。冗談抜きで分かんないんですけど。

なーにが魂に術式に歴史に欺きじゃ。ガッチガチの紹介文じゃ初心者は理解できないって言われてるでしょ。


くっそ……さっきまで共感できてたのに、あれで一瞬にして理解できなくなった。

全てが専門用語って訳じゃない。けど、言葉の並びが意味わからなすぎる。

これだから知識を一方的に開くヤツは。こっちが分かってる前提で話すのは辞めていただきたい。


…なんかブーメランが刺さった気がする。


「簡単に話すと、魂が情報を握っていて、魔力に自然と流れていきます。そして、その魔力を用いて魔法の術に流し込み、威力や速度、効能という存在の格を形成するのです」


ふむふむ、ようやく話が見えてきたぞ。

強い魔法を扱う必須技能として、経験が大事と言うが、思ったよりも大事だったな。


「分かりましたか?火魔法の件に関しては、経験不足か思考の不足かです」


「思考の不足とな?」


「はい。火の印象を強く思い出してください。熱かったり、燃え広がったり……そのような特徴を思い出せば」


「あ、できた」


『[火魔法]を獲得しました』


『称号[二重持ち]を獲得しました。それに伴い、スキル[デュアル・マジシャン]を獲得』


俺ができなかったのって想像力が足りていなかっただけなんだな。

結構頑張ってきたと思ってきたけど、まだまだ満ちていなかったらしい。

魔法の神秘を解き明かすのは遠いな。

だけど、必ず全て暴いてやる。


って、ミカさん?何故あなたは頬を膨らませて不満を露わにしているのでしょうか。

もうちょい喜んでくれても良いモンだと俺は思うんすけどねぇ。

そんなに気に入らなかった?少しのアドバイスで習得した俺を気に入らなかった?


うん、気に入りませんね。

自分が歩んできた歴史を簡単に乗り越えられちゃ、良い気分はしないもんね。

ワイは知ってる、分かってるんや。

え、違う?いつも教えられてばっかりだったから少しだけでも教えたかった?


おぉう、思ったよりも可愛い内容で俺びっくり。

……これ俺の頭が暗すぎるだけか?

はー、貴族ってこういうのあるからね。

本当に良くないよ。


「俺、魔法試しに行ってくる。ミカも来るか?」


「はい、行きます」


わく、てか。わく、てか。

くふふ、本当に楽しみだ。火の魔法ってのはどんなモノなのか、どんな性質をしているのか。


***


二つ目の魔法を獲得したディニア。それを見ている。数多の星は見ているのだ。


「奇跡の子。我々と同じか?それとも、無意識か。どちらにしても、関係ない。我々は我々の為に動くのだ。その為には、全てを!」


暗黒の星にある玉座。

それが動くのは遺産。神々が伝えてきた、人々が忘れた負の遺産。




「異常が動いた、か」


「魔女様、その表現はあまり適切では無いかと」


「あぁ、奇跡の子って呼ばれてるんだっけ。いつの時代も面倒くさい。時代や世界に縛られないウチにとっては関わりのない話過ぎて忘れてたよ」


終焉の星の下にある玉座に座りしは魔女。

その瞳は少量の光が宿っていた。


「洗脳か、洗礼か。魔道と魔導。ウチはアンタらに賭けたよ。だから……変貌者。アンタもウチ達の期待に応えな」


魔女が動くのは約束。




「希望、奇跡、変貌。あぁ、あぁ。くだらない!くだらない!くだらない!ありのままが最高にして至高であるのだ。ありのままが絶望なら、絶望を噛み締めるべきだ!」


運命の輪で騎士として立っている者は感情を吐き出し、世界に敵対者を綴ろうとしていた。

変化を望む愚か者に毒を吐きながら。


騎士が動くのは邪悪。




「あぁ、まただ。また、醜い希望を持った、光を持った者が生まれた。それでこそ人間だ。それでこそ、砕いた時が最高なのだ。ハッハッハ!支配をしてやる!お前も、私のコレクションに!」


時空の皇城に座る魔人は水晶で見た後、怪しく笑うのだ。

あたりに散らばってある人形に視線を寄せる。


魔人が動くのは我欲。




「本当にすまないね。ディニアくん。僕達のせいで巻き込んでしまって。……本当、久しぶりだよ。こんなに自分の事が嫌いになったのは」


「そう卑下をするな。俺だってそう思っている。家族を目的の為に動かしているのだから」


「それは、そうか。君は親だもんね」


「そうだ。お前と違ってな」


「ひどいなぁ」


「「……願わくば、ディニア・ノワール・クロウニスに祝福が在らんことを」」


人界に住まう代弁者と代行者は祈る。

未来を賭けた少年が苦悩を弾き飛ばす事を。


代弁者と代行者……託された者が動くのは崇高。

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