第4話 神聖国家エクスプリズムである

どうも、グランが親父に報告に行った為、一人で少女と会話をする羽目になった俺氏である。

いやさぁ…本当に許さんからな。俺が女子おなごとの会話が苦手なの知っているだろうがよ!

会話が続かなくて、視線が合うだけで照れてしまう俺が、訳あり少女とパーフェクトコミュニュケーションが取れるとでも?


取れるとでも?(恐怖)


こんな銀髪ロングの黄眼美少女が相手でまともに話せる訳…。

何でこの人こんなにも俺にドストライクなんですか??

うぉ、やめてくれ。そんな可愛らしい顔で首を傾げないでくれ。

俺の心臓に大ダメージなんだ。


「あの、私の顔に何か変なものでもあるのでしょうか…?」


「ぁ、いえ、そういう訳ではないと言いますか…麗しいお嬢さんだな、と」


はっ!しまった本音が!


「う、麗しいお嬢さん、ですか…?真正面で言われると…照れますね」


いや、あの、ニヤけないでもらえますでしょうか。

マジで止めてもらわなければ俺が死ぬ。

こんな可愛い表情で耐えられる思っているのだろうか。ナウで心臓バクバクやぞ。


「す、すみません。だらしない姿を見せてしまって」


いえいえ、めちゃくちゃ堪能させてもらいました。

少女ちゃんの緊張した表情から一瞬で解ける姿。最高以外の何者でもありませぬ。

クフフ、これでパン何個食べれることか。


…いやー、本当に可愛かったな。だらしないなんて思う要素は無いぞ。

白銀の枝毛のない美しい髪にスラッとした四肢。

まだまだ子供の状態でここまで美しく、可憐であると思わせるのだから、大人になればどれ程のモノか。


俺の想像能力では完璧に思い浮かべる事はできないが、絶背の美女になるのは確定だろう。

聖女様と比喩できるレベルの美貌へと…クー!見てみたいぜ!


「大丈夫。大変良いものを見せてくれたから」


「大丈夫、ですか…そう言ってくれたら嬉しいです。えへへ、優しい人ですね。えぇっと」


「自己紹介はしていなかったな。俺はディニア・ノワール・クロウニス。ノワール家の長子だよ」


「私はミカです。エクスプリズムの聖女へと就任しています。家名は…聖女になった時点に捨てました。それに、あんな奴らの家名を名乗りたくなんか…」


さてさて、俺氏よ。お前はどう反応するのが正解だと思う?

聖女みたいな美貌を持つだろうと思っていたら既に聖女だっった事実に驚くべきか。

それとも、聖女になる段階で親と何かしらあったという点に同情をすれば良いのか。


本当にさあ、俺こういう女子との会話得意じゃないんだよ。

普通の女子ともあんまり話していないのに、訳ありと話せる程心臓強固じゃないんだよ。

グランか親父。どっちでも良いからさっさと戻ってくんねぇかな。


いや、来ても何とかできないか。訳あり少女の経験、あの二人にもないだろ。


「ミカね。俺は気軽にディニアで良いから。何が好きとかある?聖女とか結構鎖国的になってそうだけど」


「…ふふっ、そうですね。娯楽なんて手に触れさせてくれませんでした。神聖は人口に触れてはならない、と言われて。ディニア様は何が好きなのですか?」


「俺はやっぱりねぇ、これかな」


両手で一定の空間を囲むと、一瞬の間に魔力が放出され、土の塊が出現する。

それは魔力によって不可思議に螺旋回転をしていた。

その強烈な速度。人力によって回すスピードとは比べ物にならない。

人間の理解の外にある力。それが魔力。


だから俺はそれを用いた術の魔法が好きだし、暴きたいとも思っている。

神秘を解き明かすのは罪であるし、その罪を抱えるのは愚者である。

そう、理解しているのに。俺の体は、俺の思考は、止まってくれないのだ。


溢れてくるのは知的好奇心。だから、俺は魔法が好きなんだ。


「ディニア様は本当に魔法がお好きなのですね。少し、羨ましいです。私は何もない。好きなものすらも、ない。ディニア様のように思えたら…」


「じゃあ!俺と一緒に好きなものを見つけよう!美味しい物みたいな一般的な好きとか、好きになって良いとは言えない賭けとか。何でも良い!他人の言葉なんてどうでも良い!自分が本気でやりたいと思えるのを探そう。手伝うよ。もちろん、俺と同じの魔法でも良いぜ!」


何でか分からない。分からないけど、俺の口は自然と声を、言葉を発していた。

脳で困惑して、困惑して、困惑して。俺はようやく気づいたんだ。

上手く息が吸えていないように見えたんだ。

自分の立場という檻に囚われ、窮屈そうに見えてしまったんだ。


もしたかしたら、迷惑だったかもしれない。

しかし、今の俺に悔いはない。現在にて、可能だと思える最善だったのだから。


「ふふっ、ふふふ!ディニア様、あなたは本当に良い人ですね。楽しい物を一緒に探そうなんて、言ってくれる人は居ませんでした。お願いします、ディニア様。私に楽しいを教えてください」


聖女の瞳は輝いていた。

暗く、暗雲のように曇っていた先ほどまでとは全く違う。

たった一つの希望を見つけたような、そんな素晴らしい光をしていた。


あぁ、こんな俺でも、できたのか。

いや、これからだな。この聖女様と共に、本気で楽しいと思える事を見つける。

それが、ディニア・ノワール・クロウニスの初仕事だ!


「もちろんだよ、ミカ」

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