第3話 豊穣マンである
「グラン」
「へいへい。なんっスカ」
「なんか俺、変な呼び名で呼ばれてんだけど」
相談した内容は…俺氏が変な呼び名で呼ばれている事。
肥料増やして質の良い土にして種とかを品種改良してたらですね……何故か豊穣マンと領民達の中で広まってんだな。
次期領主として良い働きをしたなって、自分でも思ってる。
だからって豊穣マンは何だ。呼び名を付けるならせめて格好いい呼び名をつけてくれ。
豊穣マンじゃ格好がつかねえんだけど。
そう言えたら楽なんだけど…あれだけ豊穣マンと呼んで慕っている所を見ると、強くは言えないんだな。
だから推定原因野郎に対策を願おうと思ってんのですわ。
「バレちまったっスカ」
「だってそういうの広げるの大抵お前だし……品種改良とかをしようって言い出したのもお前だしな」
「妥当な結果って訳っスネ」
「まあ、あんま怒ってはいないけど」
「そうなんスカ?」
そうなんすよ。まだまだ俺の土魔法は生活魔法の域を出ていない。
しかし、魔法としては確実に成長している。
最初の頃よりかは魔力消費も落ちたし、魔力出力も著しく増大した。
魔法の発動速度だって爆上げであり、土魔法の早撃ち勝負なら負ける気はあんまりしない。
ココまで成るのに一年かかった。
しかし、成長は間違いない。道をしっかりと確かめて、道を一歩づつ進んでいく。
失敗も、成長も。全てを飲み込んで歩いているのだ。
「そう言われると照れるっスネ。けど、良いんスカ?最強の魔法使いを目指すって言ってたじゃないスカ」
「まあ、そうだな。昔はそうだったよ。魔法使いに固執してた。でも、」
地面にある土を団子状にした後、手元に置いてから魔力で強化をする。
身体能力の強化はない。ただの物体の強化のみである。
しかし、そのような技でも、あっと驚くような技を繰り出す事ができるんだ。
こうやってポイっと投げますと……
多くの木々を貫通して進むんですよねぇ。
俺って魔力と魔法の才能は低いけど、身体能力とかの才能は高いのですよ。
一度でも魔力で強化された肉体は超える。
上限値も、成長率も。肉体に関わる全ての事柄は不可思議に通過し、超一点を目指す傾向にあるから……らしい。
親父から教えられた内容だから、俺はイマイチ把握してないけど。
最初聞いた時、マジで何言ってんのかと思ったのは久しい。
「魔法拳士もいっかなーって」
「そ、そそそそ、そっか。うん、それは俺もい、良いと思う」
「冷や汗ダラダラじゃん。少しは落ち着けよ」
なんでそんなにビビってんだか。
別に拳を向けようって訳じゃねえんだからそんなにならなくても良いだろうが。
露骨に恐怖されたら俺でも悲しい訳なんですよ。
だからもう少し加減しろ?
戦闘とか滅多に起こらないから見せたのに、それで怖がられるのは悲しいから。
それはなんでって?
主に親父達が平和活動に戦力を割いているから街付近に魔物が出てくる事なんて無い訳だべさ。
ほら、今だって騒動一つない平和な街。
平和な……おっかしいなぁ。
「グラン、俺の気のせいかな。比較的街に近い森で爆発音が聞こえたんだけど」
「坊ちゃん、気のせいじゃねえっス。本当に起こってるんスよ」
「なぁ、グラン」
「まぁ、良いっスよ。俺が許可しますっス」
***
森を突き進んで行ったら分かった。
この魔力の質、
それも、超がつくほどに万全な気配。死にかけならまだ分かるが、万全な状態では納得ができない。
魔物は親父達が対処をしているはず。
…っと、ダメだな。分かんねえ問題に長々と浸っちゃ。
今はできる事をしなくちゃ。
「坊ちゃん!」
「何だ!」
「マギリアルは樹木のっス!そして、それに捕まってる人がいるっスよ!」
マギリアルの急な出現に加えて、捕まっているらしい子。
何が起こってこの状況になってんだか。この領地で暗躍しようとする奴がいるかもな。
まあ、今は捕まってるらしい子を助けるとしますかね。
直接の叩きはグランに任せるとしよう。
「見えた…!グラン!」
「分かってるっスよ!」
"暗雲・四天仁保"
グランは懐から二対の刀剣を抜き、樹木のマギリアルに斬撃を繰り出す。
クロス状の斬撃は確かに樹木へとダメージを刻み、強く拘束していた少女を話す結末となる。
そして、俺はそのチャンスを逃さない。
離したその一瞬を俺は掴み取る。魔力によって強化された肉体で、もう一度樹木が少女の体を掴む前に。
「ナイスっス!坊ちゃん」
「うるさい!そんなの分かってるから、お前は目の前に集中しろ!」
少女を掴んだは良いものの、あの馬鹿が手を緩めやがったから、コチラに進む枝の数が多くなった。
こちとら、少女を抱えるのに両手を使ってるから攻撃に移しにくいってのに。
救いは攻撃の手がそんなに激しくないってとこか?この手数で馬鹿みたいな攻撃速度だったらあっという間に取り返されてたな。
まあ、今のままだと取り返されるのも時間の問題だが。
俺の肉体は通過点や何やらとかに行っているらしいが、常識を逸脱しているわけではない。
その状態で両手が使えないんなら、お察しだわな。
ちょっと試しに魔法で攻撃をしてみるが、再生されて元通り。
あの再生、相当使用魔力が低いからこれ以上撃っても無駄撃ちになるだけか。
頼みの綱はグランだけど…相当苦戦してる。
さっさと倒せってのは無茶振りになるな。
けど、俺だけで何とかできる範囲を超えている訳で。
はーキツキツ。いきなりでコレは無茶無茶マックスマックスなんですけど。
「坊ちゃん。アレ俺無理っス。妙なのに干渉されて、物理があんま効かないっス」
「見れば分かる。…一応、策がない事はないんだ。地面に干渉して、蟻地獄みたいにすれば」
「大丈夫なんスカ?」
「魔力がカラカラになる」
「じゃあ大丈夫っスね」
本当、雇い主の息子の対応じゃねえぞ。
まあ、今回は時間稼ぎでチャラにしてやるけど。
まじで頼むぞ、グラン。お前がちゃんとしてくれなきゃ、逃げきれない俺と少女は死んじまうんだからな。
「審判は怨嗟を生み、怨嗟は鎖を生む。全てが何かを生み出す不可思議。それこそが世界である」
あぁ、やばいな。魔力消費の軽減能力と威力を底上げする詠唱を用いても、魔力がゴリゴリと減っていく。
もっと試してから使うつもりだったんだけどな。
コレで後遺症とかなったら恨むぞ樹木野郎。
「グラン!」
「了解っスよ!」
地面に展開した魔法陣は地面に溶け込んでいき、螺旋状に回転する地獄へと変貌していた。
"
魔法は成功した…けど、抵抗が強すぎるぞ!?
このままじゃ魔法が押し負ける。だけど、維持するのに精一杯で強化される余力なんて存在していない。
グランの助けも期待できないし、万事休すか…?
「私の力、貸します!」
「は、え?」
突然の少女の言葉に困惑をしていると、蟻地獄が強化された。
俺以外の魔力が入り混じり、魔法は新たなステージへと登っていた。
何がなんだか分からんが、助けてもらったらしい。
これなら、押し勝てる…!
「ビクトリィィィィ…じゃあァァ!」
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