第93話

「花言葉は?」


「“慰め”とか“中傷”とか。明確な色別の花言葉はつけられてない」



即答しちゃうんだ。


この人、本当すごいな。



「あと、“私の不安を和らげて”ってのもある」



「へぇ…なんかスイセンといいクリスマスローズといい、私が聞くのって切ないのばっかりだね」



「そんなことないよ。ガーベラとか前向きな…あっ!!!」



「え?」


「ちょっと待ってて!!」


お兄さんはそう言うと慌てた様子で店内に入って行った。



すぐに戻ってきたお兄さんの手には直径三十センチくらいの少し大きな植木鉢が持たれていた。



「あぶないあぶない、忘れるとこだった。はい!これあげる!」



そう言って渡されたその植木鉢にはしっかり土が入っていてかなり重くて、その上からは少しだけ小さな葉っぱが出てきていた。


「えっ!?ちょっ…」


「ガーベラ!俺ん家のを秋に株分けしてたんだ」



株分け……?



「ガーベラは日光が少ないと花があまり咲かなくなったり生育が悪くなるんだ。だから風通しと日当たりが良い場所に置いて、できれば西日が強すぎる場所は避けた方が良い。適温は十度から二十度の温暖な」


「ちょっと待ってよ!!」



勝手に進む話に頭がついていかなくて、私は慌ててお兄さんの話を止めた。


「…うん?」


「私無理だよ!!絶対またすぐに枯らしちゃうから!!」



渡された植木鉢を両手で抱えながら、私はなぜか少し半泣きでお兄さんに訴えかけた。

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