第86話

「いや、ちょっと話してただけだよ」


「そうそう。別に俺らは」



「コイツには構わないでやってよ。変な噂とか聞いたなら、あれ完全にただの噂だから」



「え?いやでも、」



「ねぇって!!」



ハルタが一層強い言葉で否定すると、その三人は顔を見合わせて「ならいいや、ごめんね」と言って私達の元を離れて行った。


でもその言葉とは裏腹に、その口調はあまり納得はいってないようだった。


きっと私とヤったあの男子校生から直接話を聞いたりでもしたんだろう。


ヤったというその事実がある手前、それがただの噂だと言われてもあっさり信用なんてできるわけがない。




「お前も何黙ってんだ、バカ」


「うん?」


「足止めるから囲まれたりすんだろ?無視して歩き続けろよ」


「歩き続けろって…ホームの中じゃ止まるしかないじゃん。私だって電車待ってたんだし」


「それならホームをグルグル歩いてろよ」


「完全に変な奴じゃん」


「いや、変というよりは面白いぞ」



ハルタの前で私がヤったということを言われなかったのは不幸中の幸いかな。


まぁそれを言われたところでハルタはそれもただの噂だって否定しそうだけど。

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