第85話

「なに?」


この男子校の人に声をかけられるなんて、一週間前に私とヤったあの人しか出てこないよ。


「君さ、綺麗なお姉さんのところに連れて行ってくれるって本当?」


「…はい?」



綺麗なお姉さん?


それ、もしかしてお母さんのこと?


歳は三十二歳だけどね。



「学校で今かなり噂になってんだよね、君のこと。金払えばヤらしてくれる人を紹介してくれるって」


左にいた男が私の耳元に顔を近づけて小さな声でそう言った。


その言い方だとまるで私がお金を受け取ってるみたいじゃん。



「……」



「それってさ、複数とかもオッケーなの?」



今度は右側にいた男が口を開いて、私はすぐにその声の主の方へ顔を向けた。



「何がですか?」


「例えば四人でヤるとか。俺らさ、あんま金ないから。三人で割り勘にしたいんだよね」



皮肉だよね。



あんなに嫌な思いをしたのにその相手を迎えに行ったのは私で、そしてその迎えに行ったことがお母さんの集客にも繋がるなんて。




しかも四人でって…


つまりは三人でお母さんを回すってことでしょ?それで割り勘って…


普通に考えて無理じゃね?



…知らんけど。




「それがありなら俺らも紹介してほしいなぁと思って。それに君もいろいろアレみたいだし、なんなら五人で楽し」


「何やってんだよっ!!!」



目の前の男の提案を遮ったのは、後ろから走ってきたハルタの声だった。



ハルタは私の真後ろまで来ると、後ろから私のブレザーの背中部分を引っ張って男達から私を引き離した。



「コイツに何か用?」


真後ろに立つハルタを見上げるように振り返れば、ハルタは目の前の男子校生達を真っ直ぐ見ていた。

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