第74話
それでも私はそこにつっ立ったまま動けなくて、
すぐにお母さんの部屋からはカチャカチャとベルトを外す音が聞こえた。
「可愛いね」
「恥ずかしいっすよ…」
恥ずかしいってなによ…
犬みたいに尻尾振ってその部屋入ったくせに、どの口がそんなこと言ってんだよ…
「…っ、うっ…」
「え?まだ舐めてないよ?」
「手つきが…やばいっす…」
「さすが若いだけあるね…すんごい元気」
いつもよりも格段に声のトーンが上がっているお母さんに、吐き気がした。
「ん…んんっ…」
「あっ…うわっ、やっべ…」
声だけでなんとなく何をしているのかが想像できてしまう。
自分の部屋に行って布団に潜って耳を塞ぎたい。
目も閉じたい。
心からそう思うのに、私の足は動かなかった。
だって、もうすぐ私の出番だから。
私はその場でしばらく「はぁ、はぁ、」と感じている男子校生の息遣いを聞いていた。
「もう挿れたくなった?」
「いや…もうちょい味わいたいっす…」
「ん、じゃあまだイッちゃだめだよ?」
「はい…」
それからすぐにわざとらしくクチュクチュと音が聞こえてきた。
このアパートは本当にボロい。
戸を閉めているのにどうしてこんなに鮮明な音が私のところまで届いてくるのよ。
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