第72話

振り返ると、さっきの男子校生が玄関から部屋にあがって私の真後ろに立っていた。


「こちらの部屋に…」


私がその彼をお母さんの部屋へ案内しようとした時、



「エリカ、」



私はお母さんに名前を呼ばれた。



「…え?」



お母さんの方にまた向き直ると、お母さんはもう携帯を触ってはいなくて煙草片手に私の方を見ていた。



「なに?どうし」


「生理なったわ」



「……え……」



パチパチと瞬きをしながらも、私の顔は動揺が隠しきれていなかった。



「あ…えっ…でも」



「悪いんだけどさぁ、!」



動揺する私を無視して、お母さんは私の後ろに立つその男子校生に声をかけた。


「えっ?あ、はいっ!」


「今日はこっちが相手するから」


お母さんは私を指差しがらそう言った。



「え……」



私はお母さんの方を向いていたから分からなかったけれど、男子校生のその声はかなりショックを受けていた。


それもそのはずだ。


だってこの彼は“二十八歳”の女とヤるためにここに来たんだから。

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