第67話
それから二日後、私はまたお兄さんのいる花屋に立ち寄った。
外には前と同じようにスイセンが置かれていて、私はそこにしゃがみ込んで綺麗に咲くスイセンを見つめた。
そのすぐ近くではお兄さんが客と思われる女の人と何やら楽しそうに話をしていた。
なんとなく耳を傾けてみると、やっぱりその会話はお兄さんがほとんど一方的にお花トークを繰り広げているだけだった。
この人はいつ来ても相変わらずだな…
目の前のスイセンを眺めながら、私はうちにある萎れきってしまったあのスイセンを思い出した。
花びらに張りもなくて可哀想だったなぁ。
でもなぜか捨てられないんだよなぁ…
「いらっしゃい」
その声に顔を上げれば、いつの間にか客との話を終えていたらしいお兄さんがこちらを笑顔で見つめていた。
「相変わらずだねぇ」
私がそう言うと、お兄さんはこちらに歩いて近付きながら「うん?」と優しく聞き返した。
「相変わらずのマシンガントーク。今のお客さん、絶対引いてたよ」
「そんなことないよ!俺は聞かれたことに対して丁寧に答えただけだもん」
「余計な話もしたでしょ?」
「…いや、そりゃまぁ余談くらいは織り交ぜるでしょ?」
やっぱりな。
この人が花の話で聞かれたことだけを答えるなんてありえない。
まぁ私はその話が大好きなんだけど。
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