第63話

「あのねぇ…!!私はコイツが将来どうなろうがどうでもいいんだよ!!私に関係ないでしょうがっ!!!」



お母さんは真後ろに立つ私を親指で差しながら学年主任に向かってそう叫んだ。


すると、学年主任の顔色が変わった。



「何言ってるんですか!!あなたに関係なくて誰に関係があるっていうんですか!!あなたはエリカさんの母親ですよ!?」


「はあ!?好きで母親なんかになったんじゃねぇよ!!!」



はぁーあ。


いっつもそう。


どう転んだって傷つくのはやっぱり私なんだから。



私はどんな顔でこのなかなかハードな会話を聞いていればいいんだろう。



「子供の前で何てことを言うんですか!!」



言わせたのはあんたみたいなもんだけどね。



「男が勝手に中出しして妊娠して、頼むから産んでくれって言うから私は産んだだけなんだよ!!」


「…っ!」



そっか。


お母さんはお腹にいた私じゃなくて、ただただお父さんが好きでお父さんのために私を産んだんだね。


それであっけなく他の女のところに行かれるなんて…なんて哀れな女なんだろう。



我が母親ながら、可哀想。


でもちょっと笑える。



「だとしてもっ…それでもあなたにはエリカさんを育てる義務があるんですよ!?」



なかなか引こうとしない学年主任に、私の中に浮かんだ変な笑いは一気に引っ込んだ。

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