第62話

でも学年主任はすぐに驚いた顔を引っ込めて通常モードに切り替えた。



「こんばんは。エリカさんの学年主任の田村と申します」


「今聞こえたよ…なに?」



お母さんはイラついた雰囲気を全面に出しながら学年主任を見ていた。



「あの、エリカさんの将来のことでお話を、」


「だからなんなの!!??」


「…はい…?」



お母さん…なんか今日は一段とヒステリックだなぁ。


こんな人とまともに話なんてできるわけがない。



「あのさぁ、おたくら何でそんないつも急に来るわけ!?こっちの都合無視かよ!!」



そう言われた学年主任はチラッと私の方を見た。


“俺が来ること言ってなかったのかよ”みたいな顔で。



「お前らどんだけ暇なんだよ!!人の税金で給料貰ってんだからもっと働けよ!!!」



それはあんたにだけは言われたくないと思うけど。


大して税金なんて払ってもないくせに。



学年主任はとにかく冷静だった。


でも、


「私たちは暇ではありません。大事な生徒の将来のために、話をしにきたんです。エリカさんのこれからについて、まだ一年生ではありますがしっかりと学校と親御さんとで話し合い、エリカさんの夢への手助けを」


「どいつもこいつも進路がどうとか将来がどうとか…」


学年主任がどれだけ冷静な人でも相手がこれじゃあ何にも意味がない。

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