第60話

お母さんの部屋の戸は閉まっていた。



———トントンッ



「……」



しばらく待ってみたけれど、お母さんからの応答は何もなかった。



———トントンッ!


「お母さん?」


今度はもう少し強めにノックをしてみた。



「……」



でも、やっぱり返答は何もなかった。



…死んでんのかな。




———ドンドンドンッ!



戸をノックする音が、力が強くなるにつれて徐々に鈍くなり始めた頃、



「お母さ」


「なんだよ、うっさいなぁ!!!」


———バンッ!!



部屋の戸は一気に開かれた。



あ、生きてた…



お母さんが服を着ていたことに、私はすごくホッとした。

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